僕だけのヒーロー



 目が覚めたら家だった。珍しく父親と母親がそろっていた。しばらくはこの家にいるわ、といった二人にどう反応すればいいかわからなかった。とりあえず、僕は逃げるように光クラブに足を運んだ。そこに行けば、ゼラが助けてくれるだろうという考察からで、そして、作業に没頭すればそんなことを考えなくてよくなるからで。でも、無性にイライラするから些細なミスが増えて、結局はゼラに怒られた。余計にイライラして、「今日は帰る」とそこを後にすれば、タミヤが追ってきた。

「何イライラしてんだよ」
「なんでもない」
「なんでもないわけないだろ」

 そう手をつかんで隣に並んだタミヤから目をそらす。何かを言おうとして、言葉を探して、でも言葉が出なくて、足を止める。「零?」とあだ名ではなく僕の名を呼んだタミヤに酷く安心した。

「父さんと母さんが、しばらく家にいるって」
「! よかったじゃないか!」

 そういったタミヤに、首を振る。よくない、よくない、よくない! 今更家族をするだなんて、僕はどうすればいいかわからない。しかも、ずっとじゃない。しばらく、だ。またいなくなってしまうのだ。僕をおいて、あの二人は知らない家族と笑って幸せに暮らすのだ。僕の幸せなんてちっとも考えてない。

「僕もゼラと一緒で、大人が嫌いだ。自分勝手だ、僕のことなんかちっとも考えてない」
「そんなこというなよ、俺の母さんも嫌いなのか?」
「・・・・・・ううん」
「だろ?」

 首を振って俯いた僕に、タミヤがそう告げる。そうだ、僕は僕の両親が嫌いなだけだ。

「・・・・・・どうしよう、タミヤ、僕、帰りたくない」

 しゃがみ込んだ僕に、タミヤが頭をかいた。久しぶりに俺んち来るか? と聞いたタミヤにうなずく。

「明日、ゼラ達に謝らなきゃ、また怒られちゃう」
「俺も一緒に謝ってやるよ!」
「ほんとに?」

 そう首をかしげた僕に、タミヤはうなずく。

「前に言ったろ! まもってやるって!」
「聞いてない」
「げ、そうだったか?」
「ははは、顔真っ赤だよ、タミヤ」
「うるさいぞ、零!」

 つかみかかってきたタミヤの手をするりと抜ける。そのまま駆け出せば、タミヤは追いかけるように駆けてくる。ああ、楽しい。僕にはタミヤがいて、みんながいるのだ。それだけで、とても楽しく思えたのだ。





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