太陽に会いたい



 私が目がさめると真っ白な空間だった。多分、病院。父や母は目覚めた私をみて、泣いた。それはもう、泣いた。何があったの? と聞けば私はトラックにひかれたらしい。死んでいてもおかしくない事故だったらしい。一生分の運気を使い果たしてしまった気がする。
 私が目を覚ましたことで慌ただしかった周りだったが、一週間もしないうちに落ち着いた。二週間目になると警察官が来て、簡単な事情聴取が行われた。が、私は事故の前後、いや、それよりも前が思い出せなくて、何も言えなかった。お医者さんは頭を強く打ったせいで記憶を喪ってしまったんだろう、と言った。どこまで覚えているか、と言われて、記憶を辿る。高校の少しと、中学生の少しは思い出せた。でも、それ以外はぽっかりとなくなっていた。まるで消しゴムを描けてしまったかのように真っ白になっていた。私のその発言に、両親がなぜか安堵していた理由はよくわからないけど。普通は心配するところじゃなかろうか。

「運転手は薬を使っていた可能性があります」

 そう告げた警察官に、薬? と首をかしげる。

「貴方の手を血みどろの男がひいていた、とか、まわりに死体があった、とか。今でも幻覚をみるようで、ひどく怯えていますよ」

 最後にそれだけ告げて警察官は来なくなった。目撃者は多数いたが、その多数がよくわからないと証言していたらしい。何かにおびえている運転手に警察は薬物中毒を疑ったわけだ。
 警察が来なくなってからは暇だった。絵を描いたり、勉強をしたり、リハビリをしたりはしていたけど、とりあえず暇だった。引っ越してきたばかりで友人もいないのだから、余計に。親は新聞を持って来なかった。持ってきても、小説本くらいか。情報を集めることができると言えば、ロビーにあるテレビくらいだ。通りかかったロビーについているテレビは、今日は前総理大臣野々宮さんの記者会見を放送している。

「海帝派閥……これが放映されるということは大鷹くんたちは選挙に勝てたのか」

 そう小さく呟く。彼らとお別れをした記憶はなかった。どうやってわかれてしまったのかはさっぱりであるし、あの三角関係の行方を私は全く知らない。ただ、派閥云々のはなしがテレビに出ると言うことは、大鷹くんが選挙に勝ったんだろう。そして、彼は生徒会長をしているのだ。そんなことを考えていると、彼らが恋しくなった。まぁ、失恋中名大鷹くんにぶざまな姿をさらすことになるのだが、そこは開く直るとする。

「会いに行こうかなぁ……よし、行こう」

 そう決心を決めると本を抱える。両親が来ないうちに、さっさと外出届けを出しておこう。きっといい顔をしないだろうから。付き添いは仲の良い看護婦さんに頼めばいいとおもうし。






prevnext


back