変わるべくして変わる物



 そこは少し変わった空間だった。いいや、変わったと言うよりは歪で狭い空間だった。人によっては「耽美」だとか、「狂った」だとか、そういう感想を持つかもしれないけれど、確かにその空間は閉じられていて狂気に支配されていたんだろうと思う。そんな空間に「僕」は確かにいた。トモダチとその空間で毎日のように遊んでいた。いや、アレは遊びに入るんだろうか。他言無用のことだから詳しくは誰にも言わないし、今はもうその空間はなくなってしまったのだから証拠も何もないから何をしていたかだなんてわかりっこない。それに、「僕」は一人、親の関係で先にその狭く変わった空間を抜け出してしまっていたので、「僕」がいなくなった後のことはよくわからないのだ。

 ――もしも、もしも、「僕」がその空間に存在し続けていたら。
 あの日以来、そう何度も何度も考えた。でも、答えなんて出ない。なぜなら、そうなった未来が「今」存在していないからだ。「僕」はあの町にいないし、あの狭い世界にもいないのだから。
 その結果――あの町に、あの狭い空間に居続けたトモダチには永遠が訪れたにもかかわらず、抜け出してしまった「僕」にはそれが訪れなかったのだ。
 そう、「僕」はあの日、理解した。腐ったようなにおいがする、残虐で吐き気がこみ上げるような世界で。
 ――「僕」はこの酷く汚れた世界に取り残されてしまったのだと。

 だから、「僕」は鳴りを潜めて「私」があらわれた。そうして「私」は「僕」をみんなと同じ永遠にしようとしたのである。それは自己防衛に近かった。未来を知っていたはずの「僕」が壊れないために。一度に全てを失ってしまった「僕」が命を投げ出さないために。

 そうして「僕」は変わるべくして「私」に変わったのだ。





prevnext


back