俺が高校生の時、ナツと喧嘩した。
アイツが俺につきまとっていたけど、俺はそれがうざったくて喧嘩した。
ナツはそれ以来、俺につきまとわなくなった。
(少しだけ寂しくなったのは、きっと気のせいだ)
俺が高校を卒業してプロに入った時、ナツと喧嘩した。
出さして貰った試合で負けて苛々していた俺の近くでナツがピアノの練習をしていて、うるさくて喧嘩した。
ナツは、サッカーと同じくらい好きだったピアノを止めた。
(それからも、誰も弾かなくなった家のピアノは、静かにあり続けた)
それから、ナツは、俺にあまり不用意に近づかないようなった。
俺の機嫌の良い日はよく話したし、俺が苛々してる日は関わってこなくなった。
あんなに、仲が良かったのに、と母親に嘆かれた。
(俺は、なんとかナツとの間を取り繕うと、実家に帰った時はわざと忘れ物をするようになった)
また、俺は、しょうもないことで怒ってる。
「お前、本当にフザケんなよ」
ナツは怖がってる。
それが、余計に俺をイライラさした。
(いつもみたいに、言えよ、)
「……ごめん、なさ――」
「あ?」
ナツがやっとのことで紡ぎ出した言葉をかき消してしまう。
心の中で落ちつこう、落ちつこうとするが、もう一人の俺は止まらない。
「わかってて言ってんのか?」
これ以上言ったら、ナツは泣くとわかってる、のに
「泣いたら許されるとでも、思ってんのかよ!!」
どうやら俺の良心は手や足を出させないことで精一杯らしい。
それ以上、ナツを責めてしまえば、
「っごめん、なさい、」
俺は、ナツとの、
「もう、ETUには、こないから、許して、」
関わりを失ってしまうと、本当はわかってるのに。
赤崎兄妹の、喧嘩――兄――
ナツは力なく泣き崩れて、
俺は、そんなナツから、背を向けて逃げ出した。
(兄妹の絆って、こんなにもろかったのか)
22
SQUELCH!!