何を言えばいいんだろう。
静かなロッカールームで、遼兄から目をそらし考える。
とりあえず、この場から逃げたい。
タッツミーは練習場に戻っていったし、逃げようと思えば逃げれる。
けど、私の足が動いてくれなかった。
「……ナツ、」
遼兄に名前を呼ばれた。
目をあわしたくないから、俯いて返事をする。
「なに、」
「ナツ、」
「何、」
私の足じゃない足が近づいて来た。
私の足より大きな足。スパイクを履いている足。
「……ナツ、悪かった、」
ポツリと呟いた言葉に、私はビックリして顔を上げた。
遼兄の顔がすぐそこにある。
泣きそうに崩れた顔。
何十年も一緒にいるのに、初めてみる顔。
向こうから謝ってくるのも初めてだ。
私は何をすればいいかわからなくて、何て答えればいいかわからなくて、遼兄と同じように私の顔は泣きそうに崩れていった。
(そんな顔しないでよ、)
「りょうにぃは、わるく、ないよ、」
「俺がっ、悪いんだ、お前が、好きだった、ピアノのを、止めたのだって、」
「りょうにぃは、わるくないよぅ、」
ボロボロと私の目から涙がこぼれ落ちる。
止めようとしても、止まらなくて、遼兄の目からもポロリと涙が流れた。
「わるくないよぅ、」
「ごめん、ナツ、本当に、ごめん、」
ゆっくりと遼兄は私の頭を撫でる。
何時ぶりだろう、遼兄に頭を撫でられるのなんて。
あったかくて、ここちいい。
私は恐る恐る遼兄の服を掴んでみた。昔みたいに。
遼兄は一瞬驚いた表情をしたけど、昔みたいにぎゅっとしてくれた。
「本当に、悪い……」
「いいよ、わたしもわるいもん、わたしも、ごめんなさい、」
「別に、いい、」
「近親相姦はやめとけよー、赤崎ー」
聞こえてきた声に顔を上げて振り替える。遼兄も同時にそちらを見た。
「そんなことするわけないじゃないッスか。監督」
「そーだそーだ、」
私が遼兄から離れると遼兄は私の頭の上に手をおいた。
(大きなその手は私を安心させる)
「えー、だっていい雰囲気だったしさぁ、何て言うの? 甘い感じ?」
「それはタッツミーの脳内が可笑しいだけだよ、」
「そうッスよ。監督。頭おかしいんじゃないッスか?」
「……うん、仲直りしたみたいだな」
「「!!」」
タッツミーの言葉に遼兄と顔を見合わせると、口を開いた。
「当たり前だよ、タッツミー、」
「当たり前ッスよ、監督、」
「「だって、兄妹ですから」」
そんなことを言ってみたけど、まだ完璧に遼兄が怖くなくなったわけじゃない。
まぁ、きっとETUに遊びに来てるうちにそれもなくなるかな。
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SQUELCH!!