「あれ、これ、ナツちゃんじゃないッスか?」
それは、椿の一言から始まった。
なんとなくつけられたテレビに映るのは、女子サッカーの試合で、アイツがでてるわけがないだろ、と思いながら、俺(赤崎な、赤崎)は飯を口に運ぶ。
「えー、どれだよ! 椿」
「キャプテンマークつけてる15番の子ッスよ」
「……! あ、ホントだ! ナツだ!」
「嘘つかないでくださいよ、世良さん」
嘘なんかついてねーよ、と言う世良さんを軽くスルーしテレビを見る。
「ナツ……?」
「ほらな! いった通りだろ!」
「何でアイツがでてるんだよ、」
「お、俺に聞かないでくださいよ!」
別に椿に聞いた訳じゃない、と口にしようとした瞬間、監督や王子達の声がした。
ゾロゾロと昼飯を食いにきたらしい。
テレビに釘付けになる椿と、テレビのプレーでワーワー騒ぐ世良さんをじっと睨む。
これ以上、ナツが映ってることを騒ぐなよ。後々俺が面倒だから。
[15番赤崎、シュート!!!]
「よっしゃあー! 決まった!! ナツちゃん、すげーよ!」
椿の首に腕を回し、喜ぶ世良さんに若干殺意が湧いた。
「なになに? ナツいんの?」
「ナツが出てるのかい?」
「お、女子サッカーじゃねーか」
ほら、他の奴が集まってきたじゃねーか!
ため息をつき、盆を持って、あまり追求はしてこないだろうドリさん達のそばへ行こうとしたが、王子に止められた。
「ザッキー、兄である君が妹の試合を見なくてもいいのかい?」
「俺、過保護じゃないんで。放任主義ッス、王子」
「赤崎、アイツ、女子サッカーもしてんのか?」
「いや、アイツは女子サッカーはやらないッス」
「じゃあ何ででてんだよ」
「知りませんよ。第一、アイツが行ってるのは"江戸白学園大学"であって"雪代女子大学"じゃないッス」
「は? じゃあ、なんで」
「差し詰め助っ人だろ。クラブじゃなくてサークルなら他校でも参加できるし」
監督の言葉に、その場にいた大方の人は、あぁ、と納得する。
「しっかしまぁ、ナツの顔、何時もと別人じゃねーか! いっつもヘラヘラ笑ってやがんのに」
黒田さんの言葉に、ナツがそうなったのは最近の事、と言うか高校に入ったぐらいからで、その前はヘラヘラしてなかったのに、と考える。
昔の事を思い描きながら、黙って周りの話に耳を傾けた。
「俺は何時もニコニコしてるってイメージが……」
「椿に同感! 俺はニコニコフラフラって感じッス」
「セリーと同じような意見だけど、僕はナツは掴み所がないと思うよ」
ヘラヘラニコニコフラフラ、掴み所がない……
……あんまり良い印象はなさそうだな、ナツ。偶にはフォローしといてやるか、と思っていたら、監督が口を開いた。
「そうか? 俺はアイツ、芯が強くて真っ直ぐな奴だって思うけど」
「え?」
「何時もフラフラしてるように見えて自分がやるべき事以上をしてるし、何時もニコニコしてるように見えるけど、前の赤崎とのケンカした時泣いてたし、手伝いに呼んだときは真剣だし。ヘラヘラしてんのとか、掴み所がないってのは多分、」
「多分?」
「……やっぱりいいや。ごちそうさん!」
監督の言葉に、その場にいた俺以外の全員がブーイングした。
そして、しばらくすると監督に向けられていた視線はテレビへと向かった。
俺はチラリと、隣に座る監督を見る。
「! (笑ってる)」
何時もの笑みじゃなく、優しい笑み。
(微笑み、か)
「ナツは、ワザとそうしてんだよ」
監督が呟いた言葉は、俺以外には聞かれずに消えていった。
ETUと、赤崎妹と女子サッカー
(おしー! けど、ナツのパス、ウメー!!)
(うるさいよ、セリー。試合くらい、黙って見なよ。バッキーみたいに)
……出場理由については、後で電話で聞いてやろう。
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SQUELCH!!