赤崎妹と、監督





144……145……146……

リズムよく舞い上がっては落ち、また舞い上がっては落ちるボールを蹴る。
所詮リフティングだけどね。

147……148……149……

ボールを高く蹴り上げて、落ちてきたボール思いっきり蹴った。

「150スペシャルシュート! 右上!」

ボールは真っすぐ飛び、ゴールネットを揺らす。

「よし!」

一人、満足感に浸っていると後ろからパチパチと拍手が聞こえた。

「いやー、すげぇな、赤崎妹」

振り返ってみると茶髪の髪をたてたお兄さんがいた。

「誰?」

数ヶ月前にはいなかった人だ。
ってことは新しく入った監督か。若そうだネ。

「俺? 俺の名前は達海猛。愛称はタッツミー」
「タッチミー? え、何? オニイサン変態? ETUまた変な人増えたじゃん。あ、私は赤崎ナツッス」
「タッツミーだ、タッツミー。断じて変態ではないから」
「タッツミーって何歳?」
「35」
「……見かけよりオッサンだね」
「なっ!? うるせー。お前は?」
「華の高校三年生」
「自分でいうことじゃないだろ」

うん、自分でいうことじゃないね。
自分でいいつつ鳥肌たったもん。
気持ち悪いほうの意味で。

「で、ETUに変な奴が多いって?」

「おおいじゃん。うちの兄貴、すぐキレるオニイサン、年齢詐称組、自称王子のナルシスト」
「ははっ! 確かにな!」

笑っているタッツミー監督に「オニイサンも年齢詐称組だよ」と教えると余計に笑われた。自覚あるのか。

「赤崎妹は女子サッカーしてんの?」
「赤崎妹じゃないッス。赤崎ナツッス。"女子サッカー"はしてないですよ」
「"女子サッカー"は?」
「ついこの間まで、公立高校で男子に混じって"サッカー"してました」
「へぇー。公式戦は?」
「いや、公式戦は出場無理ッス。公式戦の時はコーチとかマネジとかでベンチにはいってましたけど。練習試合とかは出てました」

ふぅん、という返事が返ってくる。
なんだ。女子が男子に混じってサッカーしてちゃだめなのか。
タッツミー監督が何か口を開けかけた時、ゴトゥーが私を呼びながらこっちにきた。

「ナツちゃん、」
「出たな! ゴトゥー!!」
「ゴトゥー……?」
「ナツちゃんは俺のことを"ゴトゥー"って呼ぶんだ」
「クリリンの仇っ!」

そう言いながら軽く蹴り上げたボールは、ゴトゥーの腹部に当たった。
だって、コイツがいなければ怖いオニイサンと会わなくて良かった。
その腹いせだ。


「え、もしかしてドラゴンボールの悟空からとったの?」
「うん。そうッスよ。タッチミー監督」
「タッツミーだ。しかも、正確に発音すると"touch me"だ」
「Mr.touch me? 何か格好いい。で、ゴトゥー、何のよう?」

ゴトゥーはまだ痛いのか苦笑しながら口を開く。

「もうクラブは引退したのかい?」
「したした。あの大会でしゅーりょー。ま、練習してるけどネ」
「スカウトは来なかったの?」
「スタメンとかには来てた。キャプテンと3番、超人気。調子のってるから走らしてるけど。二人をふくむ殆どのメンバーは大学進学希望だよ、ゴトゥー」

残念だったね。そう言ってヘラリと笑う。多分、ゴトゥーが聞いているのは私の事だと思うけど。

「そんじゃさ、ナツ、お前は?」

ゴトゥーではなくタッツミー監督が口を開く。

「赤崎や黒田と追いかけっこして数分間追いつかれないなんて、ダッシュ力がそんだけあるってことだ。それに加えてさっきのあのコントロールがあれば、プロに匹敵する。ただ――……スタミナが問題だな」

ありゃ、お見通し。

「来たのは来たけど、全部蹴ってやった」

そう言って、グラウンドの入り口付近を見る。遼兄が来たみたいだ。

「だって、私は"女子サッカー"じゃなくて"サッカー"がしたいから」


赤崎妹と、監督
(遼兄来たみたいだし、じゃあね、達海監督、後藤さん)
((!))


5

SQUELCH!!