赤崎妹の、中学時代#1 





「テメェ、女の癖に生意気なんだよ!」
「っ、い゛っ、」
「女の癖に、ベンチ入りしやがって!」

女の癖に、何ていわれるなら、男に生まれてきたかった。
そうすれば、遼兄とも仲良くなれたかもしれないし、こんなことにもならなかった、きっと。
中学にあがることであの女子サッカーのチームから離れれた。
中学なら、好きなサッカーを思いっきり楽しくできると信じてたのに。

「第一、女のコイツがサッカー部にいるのっておかしくね?」

女子サッカー部ないからに決まってるだろ、この馬鹿共が。
あったとしても、入らないだろうけど。
サッカー部は男子とかついてないから、女が入ってもいいんだって。
あーあ、三年の先輩は優しかったな。
先輩達はこんなことしなかったし、私の実力も認めてくれた。
同じ学年に兄である遼兄がいたから、かもしれないけど。
同い年にしろ、一つ上の学年にしろ、何でこんなに

「っ幼稚、なんだ、」
「あ? 幼稚だと?」
「〜っ、」

殴りかかってきた先輩から目をそらす。微妙に開いたドアの隙間から、グラウンドがみえた。
同い年の人達がサッカーしてる。
……サッカーしたいのに、何で殴ったりされなきゃいけないんだ、

――プレイヤーは楽しいか? 嬢ちゃん。
頭の中であのオジサンが私に話しかける。
楽しいわけがないだろ、オッサン。
いつもプレイヤーになると、こういうことが起こる。

ふと、目が合った。
名前、何て言ったっけ。
天城だったっけ。
いつも右から抜いてるなって思ってた奴だ。
助けてほしいわけじゃないけど、目はそらされたくないな、
何て思って自嘲する。
馬鹿だな、私。目をそらすに決まってる。
(だから、自分から目をそらした)

「何笑ってやがる!」

どうやら先輩は私が自嘲したのが、気にくわなかったらしい。
自分に向けられた、何て思ったのかもしれない。
また、来る。
ボールを蹴るためのその足で人を蹴るのか、それとも、殴りかかってくるのか。
次にくる衝撃に備えて、目をつぶった。

ガツン!

殴られる瞬間に、ドアに何かが当たった。
先輩は一瞬怯んだが、そのまま私を殴る。
抵抗心なんて、とっくの昔に恐怖心に負けて消えているわけで、抵抗しない。

「何やってんだよ、ケイト」
「わりー、わりー、ボールとってくるわ、俺」
「仕方がない奴だな、俺も行ってやろう」
「おまっ、何様だよ、ササ、」

声が聞こえる。先輩達は、息を潜めた。

「……あったあった、」
「窓、割れてないな。割れてたら反省文だったのに。しかも反省文、いまなら五枚だぜ、紙」
「おまっ……それで付いてきたなっ!」
「当たり前だろ? 窓ガラス片づけんの1人じゃたいへ……おい? ケイト?」

ガラリ、と扉が開く。
天城(仮)ともう一人が顔を覗かせた。

「……何してるんスか? 先輩、」
「天、城、」
「さっきから気になってたんスけど、三上先輩達、赤崎に、何してるんスか?」

冷たい視線だ。
もちろん、私じゃなくて先輩に向けられてるが。

「イジメられてましたー、」
「テメェ、赤崎!」

屈んだままの状態で二人を見上げる。
母さん達には転けただのボールが当たっただの言ってきたけれど、今日の痣はきっと誤魔化せないだろう。
もう一人の方が、眉をひそめたし。
いつもより酷いんだろう。

「顧問の先生呼んでくるわ、俺」
「あぁ、頼む」
「待てっ、笹木!」
「嫌ッスよ。あんた達とグルだと思われたくないし。それに同じプレイヤーとして、どうかと思うし」
「立てるか? 赤崎」
「どーも」

天城の手をかり、立ち上がる。
先輩達は何か言って逃げ出した。
ゲームで出てきては何時も負ける、雑魚の悪役みたいだ。

「大丈夫か?」
「まーね、慣れた」
「慣れたって……」
「保健室行った方がいいな。歩けるか?」
「歩ける」
「……何かフラフラして危なっかしいぜ、」
「気のせい、」
「ついてく」
「いい」
「ついてく」
「いいってば、」
「ついてく」
「……はぁ……勝手にすれば?」
「おう」
「……天城だっけ?」
「ん?」
「右でばっか抜いてるから左で抜く癖もつけた方がいいよ、君」

赤崎妹の、中学時代#1
(へ? マジかよ、)
(後、シュートもコース決まってるから他も練習しなよ、)
(う、ど、努力します)
……ありがとうって言いそびれた。

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SQUELCH!!