赤崎妹と、持田 





「いたっ……すいません、」

みなさん、こんにちはー。
赤崎ナツッス。
突然ですが、今、窮地に陥っています。

知らないお兄さんに睨まれてる……!
怖い! 何かオーラでてる!
いやいや、ぶつかったのは私ですけども!
色々考えてたからさぁ、ほら。
なんて言うか……うん、私が悪いな。

「えっと、ごめんなさい。すいません。さようなら、」

そう言って、足早に立ち去る。
練習の帰りだし、ETUの結果知りたいしさ。

「雪代女子大の15番じゃん」

ピタリ、と足が止まる。
別に、アレだ。彼が行った言葉に反応したわけじゃない。彼の声に反応した。
お立ちだいによくのぼるはめになる人。
足を怪我して、試合にでれない人。

「持田、選手?」
「……へぇ、よくわかったな」
「え、あれ、東京ヴィクトリー試合中なはず……え、え、そっくりさん? ちなみに私は雪代女子大生じゃないっすよ。江戸代の学生です。あれは助っ人です」
「ふぅん、」

興味なさげだな。
よし、今のうちに……!

「お前、名前は?」
「え? あー……赤崎です」
「そうか、赤崎。……じゃあ、少し付き合え」

え? え?
訳が分からないまま、エナメルバッグの紐を持ち、引っ張られる。

ズンズンと通りを進み、入り組んだ路地を抜ける。
やばい、帰り迷子になるじゃん、遼兄いないから自力で帰んなきゃ、とか色々と考えていたら、持田選手は立ち止まっていたらしくぶつかった。
痛い。

「……あれ、ここ?」

何時もランニングしてる河川敷じゃん。
そんなことを思いながらキョロキョロしていると、持田選手はサッカーボールを取り出した。
え? サッカーすんの? マジで?
プロの人だから、物凄い光栄なんだろうけど……

「足、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ、これくらい、」
「いやいや、大丈夫じゃないでしょう!」
「大丈夫だっつってんだろ!!」

ビクリと私の体が揺れる。
怖い。遼兄の怒った時みたい。
恐怖を遠のけるために深呼吸した。

「……自分の出てないヴィクトリーの試合見て、しょうもないミスとか、自分の穴が埋まってないことに、焦ってるんですか? それとも、試合に出れないことに焦ってるんですか? 後者は――何とも言いませんが、前者の場合、チームメイトがアナタに依存していることにアナタは依存してる」
「は?」

「東京ヴィクトリーはアナタに依存している。これは、間違いない。"持田が決めてくれる"とか、"持田が何とかしてくれる"とか、みんなが思ってる」
監督は知りませんけど。

一息ついて、また口を開ける。

「そして、アナタはそれを当たり前だと思ってる。チームメイトが自分に依存……いや、頼りすぎてることが。団体のスポーツで良くあることですよ。誰かが飛び抜けて上手いとき、みんなそれに頼るんです。頼って、頼って――依存する。その人はチームに必要不可欠になる。みんなが頑張らないから」
「アイツ等は、」
「そんなんじゃない? そんなバカな。あなた達のサッカーを見てたらわかる。みんな心のどこかで、アナタがやってくれるって思ってますもん。他人に頼ってる人が全力で頑張っているようには見えません」
「……」
「そういうチームに勝つのって、案外簡単だったりするんですよ? 依存されてる人をつぶせばいい。攻撃も動きも思うようにできなくすればいい。そうすれば、チームは機能しなくなる。今の、東京ヴィクトリーみたいに」

私の言葉に、持田選手は黙り込む。

「でも、まぁ、平泉監督はそれをわかってると思いますよ。選手達が"持田がいないから"といないはずのアナタに責任を押しつけているのを、選手達に気がつけさせようとしてるんだと思います。アナタのいない試合で、最低な負け方をしようとも。東京ヴィクトリーは一人一人の能力が高いんだから、絶対にアナタがいないという穴を埋めれるはずだから。今は足掻いてるだけですって」
足掻き終わったら、きっと、今以上のチームになりますよ。

そう言って、ヘラリと笑う。
持田選手は、肩をふるわせていた。

「っ〜あっはっは! はははははは!!」
「え、ええ!? めっちゃ真剣に話してたのにっ!」
「何処の、監督だよっ……!」
「江戸代の監督です」
「はははははは!!」

ええ〜。ナツちゃん久々に真剣に話したのに。
……ちゃん付けに自分で鳥羽たった……!


「ははっ……っ……笑わしてもらったぜ、赤崎、」
「こっちは真剣だよ、コノヤロー」
「お前、下の名前は?」
「……ナツ。赤崎ナツ」
「ナツ、お前、サイコーだな」
「は?」
「サイコーだよ、お前は」

 "サイコーだよ、お前は。"
……!

「いたー!!! 持田ぁぁ!!!」
「うるせぇな、じゃあな、ナツ。また」

片手をあげて、持田選手は多分スタッフさんの所へ歩いていった。


赤崎妹と、持田
(昔、誰かに持田選手と同じ事言われた気がする。誰だっけ?)
(……思い出せん……あ! 持田選手ボール置いてった!)



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SQUELCH!!