「ねぇ、シグマ」
「……」
「私達ってさ、結構普段着とかって被らないっちゃ被らないけど、これは……」
只今、私達、スタッフオンリーな入り口付近にいます。
ちなみに私達、
私→ETUユニフォームに黒いプーマパーカー。
シグマ→ヴィクトリーユニフォームに白いナイキパーカー。
を着てるんだけど……
「正反対すぎじゃん!」
「……ああ。だが、ナツ、ヴィクトリーの監督に会うのにそれはないんじゃないか?」
「いやいや、これを着ないと有里さん怖い。名古屋の二の舞はゴメンだから……パーカーの前閉めるから大丈夫かと」
パーカーのチャックをぐぐっと上げる。
ほら、ETUって見えない、とシグマに見せたら頭を撫でられた。何故だ。
「……一応だ、着とけ」
シグマさん、黒いパーカーの上に、君のデカい白いパーカーを着ろと。
シグマに渡されたパーカーをよく見たら「TOKYO VICTORY」って文字が入ってた。
「……ヴィクトリーサポーター……抜け目ねえ……!」
ざわ……ざわ……ってなりそうだ……!
その時ナツに電流がはしる……!
ごめんなさい、ネタわかんない人はスルーしてください。ごめんなさい。
いや、決して遼兄が昔借りてきた漫画から抜粋したわけじゃないからね、うん、ないない。
シグマのパーカーを上から着る。
やっぱりデカい。タッツのよりデカい。
シグマ、タッツより身長でかいもんな、とか思いながらシグマの後を歩いていく。
シグマは扉の前でノックし、扉を開けた。私はシグマの後から、顔をのぞかせる。
うわお、生、平泉監督。ダンディーだ。
ダンディー平泉だ。
「叔父さん、」
「シグマ、きたのか。そちらは?」
「去年、帝都のコーチで、今、江戸代の監督やってる、」
「赤崎ナツです。何時もシグマ……くんにはお世話になってます」
「そんなに堅くならなくてもいい、こちらこそシグマが世話になっている。……そうか、君が……ふむ」
ダンディー平泉は何か考えるような仕草をした。ダンディーだから何やっても絵になるな、なんて考えていたらダンディーはまた口を開く。
「赤崎、と言ったが、赤崎遼の」
「妹ッス」
「そうか、似てるな」
「いやいや、似てない似てない」
「だが、帝都で指揮をしてた時は、達海に似ていた」
「……!」
「君のような才能溢れんばかりの人が育つのが楽しみだよ」
にっこり。
ダンディーは笑った。やばい、このおっさん、カッコイイ、
シグマもこういう感じになるのか、というか、なれ。
シグマとダンディーはポツリポツリと話をする。きっと、ダンディーはシグマが無口なのを――あまり喋るのが得意じゃない事がわかってるから、ポツリポツリと言葉を選んで話しているのだろう。
普段から表情が堅いシグマもダンディーも顔が綻んでいた。
数回響いたノック音に、シグマは「じゃあ、そろそろ」と話を切りあげる。
私も一礼して、シグマと部屋を出ようとした。
が、遮られた。
誰に?
決まってるだろ、ヴィクトリーの王様だよ。
「あれ? シグマ君と……ナツ?」
「……、ナツ、知り合いだったのか?」
「最近、この人に拉致られ……いたたた! 足踏まないでください! 持田選手!」
「ちょっと話しただけだよな?」
「なんか、それナンパっぽ――……すいません! 冗談です! 怖い!」
「……」
「何? ナツってシグマの彼女だったの?」
「「チームメイトですよ」」
シグマと私のダブル否定に、持田選手は「ふぅん」と言葉を漏らす。
「じゃ! そういうことで!」
「失礼します、」
二人で慌てて扉を閉めて、平泉監督の元から離れる。
こええ、持田選手、こええ……!
赤崎妹と、東京ダービー#1
(シグマ、持田選手と知り合いなの?)
(……昔、叔父さんに連れられて来た時、)
(うん、)
(PKで、)
(……)
(ズタズタにされた思い出が……)
子供相手に何したんだ! 持田選手!
83
SQUELCH!!