赤崎妹の、秘密 





「あーあ、逃げられちまったな」

そう言って肩を竦めた笠野さんにスカウティングスタッフであるという加藤が肩を竦めた。

「ここ数日あんな感じですよ」
「大変だな、滅多にプロを断る奴なんていないだろうに」
「ええ、彼女が初めてです。また来ます」
おじゃましました。

そう言ってETUの敷地を後にする加藤に、有里がちょっと不服そうに口を開いた。

「でも、もったいないな――。折角スカウトきてるのに」
「まぁ、アイツもいろいろあるんだ。こればっかりは気が変わるのを待つしかないだろうよ」
「えー、でもなんだかなぁ」
「……そういや、笠野さんってナツちゃんと知り合いだったんですね」
「ん? ああ、まぁな。嬢ちゃんが小学生の頃に知り合った。まぁ、あの赤崎の妹とは思ってなかったが」
「なんだよそれ、じゃあ、笠野さんは俺が知らない間のナツを知ってるってことか」

むっとしたままそう言えば、笠野さんは俺を見て口を開く。

「……そうなるな。ところで達海。お前は嬢ちゃんの事をどこまで知ってる?」
「どこまでって?」
「ほら、どこでどうプレーしてきたとかあるだろ?」
「高校までの話は聞いた」
「じゃあ、達海、お前は嬢ちゃんのことあんまり知らないんだな」

なんとなく、だ。なんとなく、その一言でカチンと来た。顔をしかめたまま、笠野さんを見る。

「なんだよ、笠野さんは知ってるのか?」
「いや、俺もあんまり知らない。ただ、お前たちは似てるってことはしってる。だからな、お前ならあの子をピッチに戻せるんじゃないか、って俺は思ってる」
「――どういう意味だよ」
「達海、お前は、」

全員が笠野さんの言葉に注目する。

「なんで嬢ちゃんがピッチでプレーするのが嫌なのか。女子サッカーが嫌なのか知ってるか?」

赤崎妹の、秘密
知ってるつもりでいた。短いけれど、選手と同じくらい話しているつもりだったからだ。
でも、俺は、その問いに答える答えを持ってはいなかった。



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SQUELCH!!