「その面見るに、失敗したな。達海」
「うるせー」
ムっとしたまま口を開けば、隣にいた笠野さんが返すように口を開く。「嬢ちゃんはなんて?」という問いに、「悪口を言われてまでピッチに立ちたくないって言われた」と顔をしかめたまま告げた。それに苦笑いして笠野さんは、そのまま俺の視線を追う。視線の先には赤崎だ。赤崎ならなにか知っているんだろうか。
「でも、あの兄弟にそこまで執着はないだろ」
「考え読むなよ。なぁ、笠野さんは俺とナツが似てるっつたけど、それって境遇がってこと?」
「性格もな」
「否定しないってことはそうなわけだ。ってことは、チームがナツの選手生命奪ったんだな」
頬杖をついてそう言えば、笠野さんは否定も肯定もしない。
「何時奪われたわけ」
「嬢ちゃんが小学生の頃だ」
「小学生、ねぇ」
「たかが小学生。されど小学生だな。ガキ同士の喧嘩ならまだましなんだろうが、そこに親まで絡んでくるとややこしい」
「監督は何してたんだろうな」
「気づいていなかった」
「は?」
全体を見ていた監督が、様子に気づかない? なんだよ、それ。チームの人数がおおくても、親まで陰口を叩くほどだ。ナツのプレーは目を引いたんだろうと予想はつく。なのに、気づいていたなかった?
「嬢ちゃんがヘラヘラ笑ってたんだよ。昔のお前みたいにな。だから、誰もがその問題を軽視してた。でも、その時の本人の気持ちはお前が一番わかるだろう?」
「……逆に、ナツはなんで今だにサッカーに関わってんだ? 俺があの体験を小学生でしたとして、関わらないようにすると思うんだけど」
「好きなことをやめられると思うのか?」
「思わない」
なら、関わり続けている今もナツはサッカーが好きなわけで。ETUの面々とじゃれてサッカーするぐらいには、プレイヤーも好きなんだろう。
でも、文句を言われる。ナツは『プレイヤー』から逃げて『監督』になったのか、と納得する。
「嬢ちゃんは2度逃げてる」
「2度?」
「ああ、嬢ちゃんと会うときに、いっつも『プレイヤーは楽しいか?』って聞いてるんだが――全部、作り笑いで答える。だから、そのたびに逃げ道を渡してたんだが」
「『サッカー』と『監督』?」
「そうだ。嬢ちゃんの実力は男子に紛れても全然できる実力だ。自分より実力が劣る中でプレーするから、めだって悪口を言われる。中学の部活なら男女区別がない。だから、サッカー部への入部を薦めた」
「でも、男子の中でも目立ったプレーするナツは目をつけられる」
「ああ、だから、今度は中学や高校の監督がナツに『監督』を勧めた」
「そのまま、監督に逃げ込んだ」
「プロなら、嬢ちゃんの実力でも何も言われない。まぁ、どこにいても陰口はついてまわるだろうよ。でも、あの子も大人だ。社会はそうだと、そろそろ理解しなきゃならない」
「でも、そこでも否定されたて、ナツが逃げたら?」
その問いに、笠野さんはすっと俺を指さす。
「その時は、達海、お前が逃げ場になってやればいい。お前は大人であり、プロのプレイヤーでもあるんだから」
監督と、スカウティングスタッフと、あの子の話
「まぁ、その前に仲直りだろうけどな」
「うぐ……」
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SQUELCH!!