「タッツー!」
ETUの敷地を走り、見つけた姿に突撃してみる。足を壊しているから軽く、だけど。
タッツは少しよろめいて、私の頭を撫でた。
「おー、合宿終わったのか」
「終わったよー、死ぬかと思った」
「お前、体力ないもんな」
「これでもましになったんだよ。合宿で」
そう言って、顔をしかめながらタッツから離れる。
「練習に顔出してくか?」
「ううん、今からケイトたちんとこに行く。これで新監督のもとサボってたら練習メニュー倍にしてやる。ありがとね、タッツ。新監督探すの手伝ってくれて」
「別に、俺知り合い多いしこれぐらい大丈夫だって。で、」
「うん?」
「なでしこの試合いつ?」
ニヒーと笑ったタッツに、視線を泳がす。
そう、私、赤崎ナツは女子プロに入ることにした。タッツの言葉に、少し勇気が持てたのだ。それから、チームメイトに相談しても、みんな背中を押してくれて。でも、みんなの――特にユキの――選手生命を潰す訳にはいかないから、引き継いでくれる監督を必死に探した。タッツや笠野さんも手伝ってくれて、元プロで監督をしていた方が興味を持ってくれたのだ。だから、一から説明し、どういう選手だとか言う事を伝えれば喜んで引き受けてくれた。いやぁ、話を聞いてくれる紳士的な監督さんでよかった。なんでも、海外チームでも監督をし、リーグ一位は取れなかったもののつねに二位、三位といい成績をキープしていた方だった。お金云々は、引退した自分は趣味だからいいのだと言ってくれた。本当にいい人だ。
そして私は、プロに一歩踏み出すことになった。チームのメンバーはみんな良くしてくれる――まぁ、やっぱり衝突はあるけれど――ので、雰囲気もいい。オリンピックの方も誘いがまたあり、顔を出せばそのまま合宿参加となった。
タッツに、ベンチだよ、ベンチ、といえば、途中から出されるだろ、と言われる。そういう感じのことを言われたので、否定はしない。
「いつでも、逃げて来たっていいからな」
「うん。私もタッツにそう言えるように頑張ろうかな」
「へ?」
きょとん、とした顔をしたタッツに、ニヒーと笑う。タッツは、ふ、っと息を吐いて笑った。
「だって、私だけささえてもらうとか図々しいし。だから、私もタッツをささえれるようになりたい」
「なら、どっちかが逃げこんだら、俺たち結婚な」
「いいね、それ。タッツが結婚してなかったらだけど」
「……」
「え? 何、その視線」
「いーや、なんでも」
ぐしゃり、と頭を撫でてきたタッツに、うわ、と声を上げれば、タッツはニヒーと笑っているわけで。
私も同じように笑いながら外を見れば、ETUのメンバーが練習しているのが見える。記者がいるのを見て、ああ、そっか、公開練習中か、といえば、その通り、とやってきた有里さんが口を開いた。
「もー! 公開練習中にサボる監督がどこにいるのよ!」
「おっと……助けて、ナツ」
後ろに回り込んだタッツに、ケラケラと笑う。
「今すぐ結婚しちゃう?」
「俺は歓迎するけど?」
「結婚しちゃ……は!?」
固まった有里さんに二人で笑う。冗談だといえば、有里さんが動き出した。
「じゃあ、そろそろ大学のグラウンド言ってくる」
「ん、いってら。がんばれよ」
「タッツもねー!」
そう言って手を降って、施設を走れば、すれ違ったゴトゥーに「走らない」と怒られたのはしかたのないことだろう。
赤崎ナツと、達海猛は
赤崎ナツは思う。きっと、そう遠くない未来、タッツはETUを率いてタイトルを獲るだろうな、と。
達海猛は思う。きっと、そう遠くない未来、ナツは素晴らしいプレイヤーになるだろうな、と。
二人を知る人達は思う。きっと、そう遠くない未来、赤崎ナツと、達海猛は。
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SQUELCH!!