それは、ある晴れた穏やかな日。
何時ものように、河川敷に出てみると――
「ぎゃああ!」
「お、ジャストミートだな、」
星にサッカーボールがシュートされてました。
赤崎妹×荒川橋下
とりあえず、起こしてみる。
「……大丈夫か? 星……」
「この強烈なシュート……五年ぶりだぜ……」
「? 五年?」
「お、そうか、リクは知らないんだな。サッカー兄妹」
「サッカー兄妹? 何ですか、それ」
「五年ま――」
「すいませーん! サッカーボール吹っ飛んで来ませんでしたかー?」
村長の話を区切った女の子の声。それに遅れて、「待てよ、」という男性の声が聞こえた。
手を挙げて走ってくる女の子と、ゆっくりと歩いてくる男性。
それはどう見ても一般人で、
……やばい! こんな不審者軍団見られたら、間違いなく通報される!
とりあえず、一般人な俺が対処しなくては……!
村長を隠すようにして、ボールを渡す。
「あ、はい、これですか?」
「ありがとうございます。怪我人とかいませんでしたか?」
「ははは、大丈夫ですよ」
「後ろの黄色の物体がキモイです、お兄さん。お久しぶり、村長さん」
「は?」
「お前、まさか、ナツか?」
「そうですよ、後ろから来てるのが遼に――……ツバサ兄!」
「マジで? おーい、ツバサー!」
手を振る村長に、控えめに振り返す男性――青年、と言った方が正しいのかもしれない。俺と同い年ぐらいだし。どっかで見たことある顔……
というか、知り合い? 住人?
「久しぶりっす、村長さん」
「久しぶりだな、サッカー兄妹!」
「お元気そうで何よりです、」
「うん、元気そうで良かった!」
「お前等もな〜、」
何で馴染んでるんだ、この二人。
「で、村長、何時になったら素顔晒してくれるんスか?」
「何言ってんだよ、ツバサ。俺は年中素顔だぜ……」
「そうだよ、ツバサ兄! 村長は河童を演じてる青ね――じゃなくて、河童の着ぐるみ的な物を着てる男せ――でもなくて、立派な妖怪だから!」
「いやいや! 疑ってんじゃねーか!」
「「!」」
あ、しまった……つい……
「ツ、ツバサ兄、あ、荒川にっ……」
「あぁ、」
「「ツッコミが……!」」
「何わざとらしく震えてるんですか!」
「お兄さん、ピリピリしすぎるとハゲますよ」
「可愛そうに、俺と年変わらないのにな……」
「ね、」
「いやいや! ハゲる事決まってませんから!!」
「っていうか、村長、これ誰?」
「新しい住人で、リクルートっての」
「リクルート……」
「リクルート……」
憐れんだ目で見るなぁぁぁぁ!!
「というか、そっちこそ誰なんだよ!」
「俺? ツバサ。本名的では赤崎遼」
「私はナツ。本名的でも赤崎ナツ」
「二人共、一応住人だからな〜」
「一応?」
「ここに住んでないもん。実家通いでここ来るもん」
「! そういうのって――」
「つーばーさー! テメッ、お前だろ、サッカーボール俺に当てだの!」
「俺じゃない」
「ナツちゃんがそんなことできるわけないだろ! なぁ、ナツちゃん」
「あはは、私がお星様に当てたところで、お星様は人じゃなくて物な訳だから傷害容疑じゃなくて、器物破損だよね。あれ? 星ってものでもないか。物質か。じゃあ罪にならないね」
にっこり。
そんな擬音がつきそうな笑顔で、女の子――ナツちゃんはそう言った。
まさに、マリアさん予備軍……!
ほしは俯いて肩をふるわす。
落ち込んでる……?
「ほし、お前――」
「ナツちゃん、もっと罵って……」
「!!?ほし!? 大丈夫か!? キャラ崩壊してるぞ! お前!」
「……うるせぇ! リク! ナツちゃんだけはっ、ナツちゃんだけはっ、」
「お星様、何で喋ってんの? 星って物質だからしゃべれないでしょ?」
「……はぁはぁ」
「キモイ。ツバサ兄、これキモイ」
「ああ、キモイな」
「……ほし、お前、キモイ、」
「ツバサとリクにはいわれたく――」
「「あ、喋った」」
見なかった。俺は見なかった。
素晴らしくいい笑顔のツバサさんとナツちゃんが、ほしを足蹴りしたのなんて見なかった。ほしが若干嬉しそうにしてたのなんて見なかった。
「何してるんだ、」
「あ、ニノさん!」
「ッス、」
「? …………………………? ……………………………………………………………………………………………………………………ああ! もしかしてツバサとナツか!」
「思い出してくれた! 嬉しい!」
「久しぶりだな! ツバサ、ナツ!」
「久しぶり。ニノ」
「え、何かツバサさんとニノさん親しげ?」
「おお、リク! そんな所にいたのか! ツバサ、ナツ、リクは私の恋人なんだ」
「マジで?」
「おめでとう! ニノさん!」
「結婚式、呼べよ、ニノ」
あれ、親しげでもない……?
「ああ! 勿論だ! 二人は月の人だからな!」
「はぁぁ!? 月の人!?」
「月の王子と王女らしい。何でも勉強しに度々地球に降りてきているとか」
「いやいやいや……」
月とか有り得ないから、ニノさん。
というか、マトモだと、ドSだけど、二人はマトモだと、
「あ! シスターにマリアさんにP子さん!」
「あんまりはしゃぐと明日熱出すぞ、ナツ」
「大丈夫だって、」
ナツちゃんは笑って、シスター達の元に駆け寄る。ツバサさんはそれを微笑んで見ている。
「……何スか? リクさん」
「いや、血は繋がってるのかなぁ、と」
「髪色」
「え?」
「俺とナツの髪色、一緒だろ? 血がちゃんと繋がってる証拠ッスよ」
「本当だ」
「本名の名字も、一緒ですし」
ナツちゃんを見る、ツバサさんの目は穏やかで暖かい。
きっと、本人は気がついてないんだろう。
「リクさんはニノにスカウトされた感じッスか?」
「スカウト? あぁ、まぁ、うん。ツバサさんは?」
「ツバサでいいッスよ。同い年ぐらいだし。――……俺は、中学の時、ちょっと家出した時にお世話になったのがはじめです」
「ナツちゃんは?」
「アイツは、その後、俺について来て」
ツバサは懐かしむように目を細めた。
きっと、昔の事を思い出したんだろう。
「俺とアイツね、ここに来てもすぐ帰るものだから、村長に"月と行き来してるかぐや姫みたいだな"って言われたんスよ。だから、"そうかも"って答えたら月の住人になっていて、驚きました」
「かぐや姫だから王子と王女?」
「ええ。まぁ。村長が、帰るのを不思議に思った住民にそう説明してくれたんだと思うんスよ。あの人は、いい人ッスから」
「そうか?」
「リクさんも、そのうちわかりますよ」
「……」
「この河川敷に来るの、五年ぐらいぶりなんスよ」
「五年ぶり?」
「……ナツと、喧嘩して、仲が悪くなって。来にくくて、まぁ、仲直りしたから来たんスけどね。色々、報告したい事とか会ったんですけど、一人じゃ来にくくて」
サッカー兄妹。
村長はそういった。
ということは、彼らは二人で一人なのかもしれない。
「まぁ、ナツもそうだったみたいで、ここにくる口実にナツにサッカーボールをほしにぶつけさせたんスけど」
「……」
「それに――」
「ツバサ兄! こっちおいでよ! リクさんも!」
ナツちゃんが無邪気な笑顔で呼ぶ。
ここにこれたのが、嬉しいのか。
ツバサ君は、照れたように笑って、一歩一歩と足を踏み出す。
兄妹。
俺にはいないけど、もしいたら、ああ言う感じなのか。
ツバサがみんなの輪に混ざり、会話に加わる。
それに、俺達、何やかんや暴言吐いたりしてますけど、ここの住人が好きなんで。
「それには同感、かな」
「リクさん、早くこないと、シスターの拳銃が火を噴くよ!」
「え゛!」
赤崎兄妹と、荒川住人
(村長、また来ていい?)
(おう! ナツとツバサなら何時でも歓迎だ!)
(ッス、)
(で? サッカー少年、地球でプロになるとか言ってたのはどうなったんだ?)
(ツバサにいはなったよ!)
((は?))
(ETUの、15ばん!)
(!!?)
(まじかよ……!)
(ああ、)
(うん!)
(ナツは何してるの? 今は、えっと、)
(だいがくいちねんせい! 友だちとサッカーしてる!)
(シスター、体温計、)
(ああ、そろそろかと思ってたんだ)
(あらあら、ナツちゃん。まだその体質治ってなかったのね、)
(ん?)
ぴぴっ
(……だからはしゃぐなっつったのに。今日は帰ります)
(ああ、そうした方がいい)
(えー、やだ、)
(また来ればいい話だろ? ナツ)
(んー、村長がいうならそうする、)
(じゃあ、)
(今度は喧嘩するんじゃないぞ/わよ/すんなよ、二人共)
(はぁい)
(ッス、)
97
SQUELCH!!