赤崎兄の、苦悩




「赤崎、」
「何スか?」
「お前だけに、先に言っておこうと思う」
「はい?」
「俺とナツ、な、」
付き合ってんだ。

監督の爆弾発言が投下され、俺は固まった。は? 付き合ってる? 誰と誰が?
ナツと、監督が……?

「いやいや、エイプリルフールはとっくの昔にすぎましたよ!」
「いや、マジだって、」
「あ、タッツ! 遼兄!」
「お、ナツ!」

小走りでナツが駆け寄ってくる。
監督は片手を挙げて答え、笑顔を浮かべた。そして、ナツは抱きついた。
……抱きついた?
抱きついた!?

「タッツ、遼兄と何話してたの?」
「お前と付き合ってる、って。信じてくれないんだぜ?」
「えー、」

ぎゅーっと擬音がつきそうなほど、監督はナツを抱きしめる。
必死に頭を動かすが、頭がついていかない。
ナツと、監督が、付き合ってて、
ナツを、監督が、抱きしめてて、

「いやいやいや……」

ありえない。
確かに目の前でナツと監督はいちゃいちゃしてるが、いやいやいや、

「何? 赤崎、お前信じないの?」
「えー、何で? 遼兄、」
「……おい、ナツ、エイプリルフールはもうとっくに――……」
「ナツ、」

俺の言葉を遮って、監督が名前を呼ぶ。
ナツが監督の方向を見る。
俺は目を見開く。

ちゅっ、

可愛らしいリップ音をたてて、監督はナツの唇から唇を離す。
ナツの顔がほんのり赤くなる。
ナツのあの顔は――「――にぃ!」

「信じたか? 赤崎、」

何時もの笑みを浮かべる監督と、恥ずかしいのか俺から顔を背けて監督の服を掴んでいるナツ。
ナツの表情を読めない程、俺は馬鹿な兄貴ではない。
これは、本当か、マジか、
ということは、

「監督が俺の、義兄になるんスか?」

ナツ、悪い。
俺はそれだけは反対だ。
嫌だ、絶対に緑の物体と監督と世良さんだけは嫌だ。



「――うにぃ! 遼兄! 起きろゴラァァ!」
「うっ……!」

腹部に走った痛みに、世界が暗転する。
そして、目を開くと珍しく私服を来たナツがいた。
夢、か。夢だな、夢だ。
ナツにバレないように安堵のため息をつく。
そして、何時ものように悪態をついた。

「ってぇな、」
「やっと起きたな! コノヤロー!」

「まだ7時じゃねぇか、寝る」
「だめだめだめ! 今日はおばあちゃん家行く日だから! はやく用意しろってお父さんがうるさいから!」
「……! ……はぁ、わかった。着替えて行くから、出ていけ」
「あいよ〜!」

そういってナツは扉まで行くと、振り返って無表情で口を開く。

「あ、遼兄。遼兄だから言うけど、私ね、タッツと付き合ってんの」
「はぁ!?」

赤崎兄の苦悩
(なんちゃって、うっそぴょーん!)
(てめっ!)
(うわ! 枕投げないでよ! 遼兄がうなされてるのがわるいんだよ!)
(許さねーよ!)
(わわわ、クッションだめー! 暴力反対! そして、私の恋人はパッカ君です!)

それからナツにより監督に伝わり、監督と世良さんを筆頭としたETUメンバーに遊ばれるのは別の話だ。

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SQUELCH!!