パスについての手がかりを得ようと彼女の部屋を物色していたカズは彼女の日記であるカセットテープを見つけた。数枚のナンバリングされたテープと、一枚だけ別に取られているテープ。カズはそれを持って、ボスの部屋へ向かう。ノックをすれば、数秒遅れてから、入れ、とボスが呟いた。
「ボス、パスの部屋にテープが……と、すまない取り込み中だったか。また後に――」
「違う! そんなんじゃない! それは誤解だ」
珍しく慌てるボスに、カズは冗談だと笑う。まぁ、半分本気だったのだが。それも、彼のベッドにナマエが陣取っていたからである。すうすうと小さく寝息を立てているあたり、寝ているらしい。頬には涙の後がある。泣いたのだろう。
「昨日までの激務と、今日の事で疲れていたんだろう。で、テープがどうかしたのか?」
「何か手がかりを探そうとパスの部屋を物色していたらな、日記らしきテープが出てきた」
「日記らしきテープ?」
「あぁ」
カズはテープを机の上に置く。テープには丁寧に日付が古い順にナンバリングしてあった。
「あと、これも」
カズはもう一つのテープを取り出す。ナンバリングされていないそれは、新品のように見えるがどうも違うらしい。とりあえず、二人は日記らしきテープを聞くことにしたらしくテープを流し始める。
最後の一本になった。あの、ナンバリングされていないテープだ。カズがそれをセットすると、音声が流れ出す。
『ナマエへ』
「ナマエ当てか?」
「あぁ、そうらしい」
『貴方は私に親切にしてくれたのに、裏切ってしまってごめんなさい。私は貴方が羨ましい。貴方のように、全てに客観的にいられたのなら、こんなに悩まなくってよかったのに。……ううん、それは違う。客観的だからこそ、貴方は私の異変に気づいていた。最初から』
「最初から?」
『ナマエ、本当にありがとう。また、会えたらいいのに。また、会えたなら。ううん、また、別の人として、会えたなら。私たち、友達になれるかな……? …………もう、いかなくっちゃ。ねぇ、ナマエ』
――幸せになって。
その声を最後にテープは止まった。