古今東西英雄無双(4) 



「ほぅ、それは興味深い現象よ」

 そう言って考えるそぶりを見せた男に、ナマエははぁ、と生返事を返す。その隣に控える、ボスと似ても似つかぬ隻眼の男はナマエを睨みつけていて居心地がわるい。
 ここは、魏という地域らしい。孫市は今、この魏の主である曹孟徳に雇われていると同時に身を寄せているらしい。ここに来る道中、政宗は? と尋ねたが、ばつが悪い表情を浮かべて「しばらくは俺と行動したほうがいい」と返されてしまった。
 魏、曹孟徳――曹操といえば、 「三国志」という小説だ。ナマエも何度か読んだことはあるし、カズが仕入れてくれた漫画でも読んだことがある。そんな中国史に残る人物が目の前にいるのだ。孫市もいるとなれば、あの時代の人物もいるに違いない。理解が及ばない、すごいことになったとナマエは頭を抱えたくなった。

「でも、よくよく考えると孫市と曹操……さん? が同じ言葉を喋っているあたりおかしいので……」
「なんでだよ?」
「だって、曹操さんのところの言葉と孫市のところの言葉、違いますし」

 ナマエの言葉に孫市と隻眼の男――夏侯惇は首を傾げた。イマイチ要領を得ないらしい。ただ、曹操は違うらしい面白そうに笑っている。

「なるほど。今まで気にかける人間がいなかったからこその発見よ。おもしろい。しかし、儂では答えはわからんな。女媧にでも聞いてみるか……」
「女媧?」
「女の仙人だよ、仙人」
「は? 仙人??」

首を傾げるナマエに、孫市がどう説明しようかと迷っている。それを見て曹操は興味深そうに笑った。

「ナマエ、と言ったな」
「はい、なんでしょうか?」
「お主は雑賀衆か?」
「いいえ、孫市には色々あって世話になってたんです」
「ほう。ナマエの持つものに興味がある。ナマエ自身にも、な」
「孟徳、まさか役に立つかわからないこんな女をおいておく気か?」

今まで黙っていた夏侯惇が口を開く。

「役に立たないことはあるまい。武器をもつ、ということは戦えるだろう」
「ナマエを戦にだす気か?」

孫市が顔をしかめた。曹操は、気が向けばな、と要領を得ない返答をしてナマエを見た。

「戦うより、治療のほうが得意です」
「ほぅ、医学に通じるか。二人で詳しく――」
「孟徳!」
「曹操!」

苛立つような夏侯惇と孫市の言葉に、曹操は口を紡ぐ。ため息を逃したあと、近くにいた別の部下に「女媧を呼べ」と声をかけた。

「なにはともあれ、歓迎しよう。ナマエ」
「ありがとうございます……?」

首を傾げたナマエに、曹操は愉快そうに笑った。