古今東西英雄無双(10) 



「ナマエ、この戦に勝利すれば褒美をやろう」

 移動中、不意に女媧から告げられた言葉にナマエはそちらを向いた。最後の戦、魔王を倒すだなんて何処ぞのゲームのような戦を目の前にしての言葉だった。

「褒美はいいので、元の世界への戻り方を教えていただきたいです」
「……いいだろう、ナマエの世界への渡り方を調べておこう。……そんなにも元の世界へ帰りたいか?」
「はい」

 女媧の言葉にナマエは即答する。ボスが待ってくれている。きっと。ただの予想といえば、そうなのだが。


 戦が始まると、ナマエは息を飲んだ。自分の知る戦争と全く違う。ガチャガチャという鎧の音、雄叫び、悲鳴、騎馬隊の音、様々な音が混ざっている。自分の知る戦争では、悲鳴と銃声、時々狂った人間の雄叫びが聞こえるくらいで。士気も断然こちらの方が高いに違いない。
 だから、か、わからないが、一人分断されてしまってもそんなに恐怖は感じなかった。
今回、ナマエは孫市と共に後方支援だった。しかし、敵の細工により一人取り残されてしまった。最初は何十人という相手に怯んだが、火縄銃よりも断然威力が高いナマエの時代に製造された銃の引き金を引けば、面白いくらいばったばったと倒れていく。流石に弓兵は苦戦したのだけれど。
 くるり、と辺りを見渡せば、どうやら取り残されたここは砦のようである。ためしに砦の見張り台に登って見れば、遠くの方に敵の陣地がみえる。様々な色を纏った兵達が戦っているのも。
 バックパックから双眼鏡を取り出し、そちらをみた。一部だけ、人同士が戦っている場所があった。

「……政宗?」

 そこで敵側に指示を出しているのは間違いなく政宗だ。政宗と戦っているのは孫市である。その様子に首を傾げた、が、敵兵がうようよしている中でよく一騎打ちじみたことができるな、とナマエはおもった。チラリ、と見ればまだ倒していない敵将が集まってきている。

「おやぁ、ナマエ殿じゃないですか、奇遇ですな」

 聞こえてきた声に双眼鏡をおろし、辺りを見渡していると青いターバンをみに纏った男が兵をつれている。

「賈詡さん」

 ナマエが男の名を呼べば、男はこちらを見上げた。

「何をしてるんです? 貴方は雑賀といたはずでは?」
「敵に、小隊と分断されてしまったので」
「成る程」
「砦に登っているのは、孫市達を探してたんです。賈詡さん、手伝っていただけませんか?」

 そういえば、賈詡は首を傾げる。ナマエは賈詡に見張り台に登ってくるように促すと、賈詡は律儀にも登って来てくれた。

「手伝う、とは、なにを?」
「これ、持っていてください」
「これは?」
「私の世界の遠くを見る為の道具です。円を覗きこめば遠くがみえます」

 ナマエがそう言うと、賈詡は双眼鏡を覗き込む。「こりゃすごい」と呟くのが聞こえた。ナマエは、といえば、バックパックから狙撃用ライフルを取り出し組み立てる。カチャカチャという音に、賈詡がナマエをみた。

「私は今から狙撃していきます、その場所を教えていただきたいです」
「狙撃?」
「あー、私の世界の銃でうっていきます」
「まさか、この距離が?」

 眉を顰めた賈詡に、それもそうかとナマエは思う。

「3〜4里あたりまではいけます」
「……あんたの世界の武器は怖いね、全く。向こうは何が起こったかわからないまま命を落とすわけだ」
「そうですね、でも、私の世界の戦はそれが当たり前でしたから」
「……怖い世界だ」

 そう呟いた賈詡は、「わかった手伝おう」と頷いた。


 少しの説明で理解をする軍師はやはり凄いとしか言いようがなかった。

「おしい、そこから右に十歩程だ」

 双眼鏡片手に指示を出してくれる賈詡は本当にありがたい。魏軍を中心に(と言っても魏軍が中心に起こした戦なので、魏軍の小隊に他の勢力が入ってるに近いだろうが)援助していった。その際、他勢力は驚き、魏軍の人が何か納得していたのは何故だろうか。孫市に至っては倒れた敵から推測したのだろう、政宗を取り押さえた後こちらを見て来た始末である。孫市が凄いとしか言いようがない。

「うーん、これは凄い。是非とも魏軍に欲しいねぇ」
「銃が、ですか?」
「はっはっ、武器を使えないと意味がない。ま、これは誰にもつかえそうだからいい。偵察にももってこいだ」

 双眼鏡をナマエに手渡しながら賈詡が言う。

「後は殿や夏侯惇将軍がどうかしてくれる」
「ナマエ」

 不意に聞こえた第三者の声に砦の下を見れば、孫市がいた。馬に乗っている、と言うことは、あそこから馬でかけて来たらしい。政宗も馬にぐったりとして倒れた状態で乗せられている。一応捕虜というだけあり、縄で縛られている。

「孫市、無事でしたか」
「ああ、ったく、はぐれたと思ったらこの砦にいたのか」
「敵に分断されたんです」
 まぁ、そのお陰で狙撃できたんですが。

 ナマエが、肩をすくめる。孫市はため息をついた。

「孫市殿がきたなら大丈夫のようだ、俺は前線へ駆けつけるよ。さっきの言葉、考えといてほしいねぇ」

 そう告げると賈詡は器用にしたにおり、部下に指示を出して古志城へ向かっていた。ナマエが意味がわからず首を傾げていると、孫市が怪訝そうな表情を浮かべている。

「何言われたんだ?」
「……? あぁ、武器が欲しい的なことは言われました」
「お前、それ、」
「?」
「いーや、お前はもう雑賀衆に来い。魏軍や政宗んとこで悪用されるよりマシだ」

 孫市の言葉にとりあえず頷く。よくわかっていないのだが。


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距離単位「里」について。
ナマエが孫市に「射程範囲は半里程」といい、賈詡には「3〜4里程」と言っていますが、日本においては「一里=約3km」なのに対し、中国においては「一里=500m」ということらしいのでそれをそのまま使用しています