感染注意(1) 



 全寮制のこのマルハワ学園で、ナマエことナマエ=シアーズはちょっとした有名人になっていた。と、いうのも彼女の生い立ちが他の誰よりも特殊で彼らからしたらあり得ないことだったからだ。ナマエが人混みを歩こうとすれば彼らは勝手に避けていくし、必要以上にナマエに近づこうとしない。それは、ナマエを恐れてという理由もある。

 ナマエ=シアーズは、とある政治家に拾われた戦争孤児である。戦争孤児といっても、戦争で親をなくしたなんてものではなく、子供兵として戦場にいた。そして、シアーズという男の秘書に拾われた。ナマエはこの時、もしかしたらボスと出会えるのじゃないかと思ってついて行ったのだが、結果は想像とは違い、小太りで滑稽な男だった。その男は知名度の為にナマエを引き取ったとメディアに発表し、後は知らんぷりだ。追い出すようにこの学園に入れさせられた。メディアの発表をしる学園の生徒の殆どがナマエを恐れる事態になったのは、こいつのせいだと言えるだろう。

 ナマエはナマエで、このシアーズという男が自分の朧げな記憶にある、あのボスにそっくりな「シアーズ」でなければ、戦場に戻りたかったのだ。戦場にいなければ、きっとボスには出会えないだろう。しかし、この学園を抜け出すのは不可能だ。外部からの接触もなければ、こちらから外部へ接触することも不可能。いや、手紙という手段はあるが。

 そういえば、昨日から二人ほど外部からこの学校にやってきていた。何処かの大学教授と学生であるらしいが、なんの為にきたのかは知らない。ただ、嫌な予感がするのは確かである。どこか――そう、曖昧だが、マザーベースの襲撃前にあったような――ナマエは顔をしかめて首を振る。気のせいだ、きっと。窓から下を見てみればネズミを追いかける2人組が目に入る。

 面倒なことに、ならなければいいが。