感染注意(2) 



 嫌な予感が当たった。
 というのも、学内が物凄いパニックに陥っていた。あのゾンビっぽい生き物によって。化学兵器に対しての戦闘は慣れているが、どうも生物兵器というかゾンビ相手の戦闘ははじめてだ。きっと近づいたらアウト、頭を仕留めなければ何度でも復活しそうだ。

 ――ボスなら、どうしたのだろうか。
 頭によぎった存在が何処か懐かしく感じる。あの人がいたなら、心強かったのに。それに、昔の自分ならこのままきっと死にに走っているだろう。

 ナマエは浮かんだ考えに自嘲的な笑みを浮かべる。そんなことを考えたって、あの人はここに、この世界にいないのだし、昔の自分を考えたって意味がないことだ。ぎゅっとナマエは握っているナイフを力強く握りなおした。

 このあたりにきっと、安全な場所などないのだろう。下に降りて戦うか? しかし、下はゾンビの巣窟である。屋上へ逃げたって逃げ場はない。銃火器があれば楽なのだが、生憎自分は銃火器を所持していない。頼りはナイフだけだ。
 ――屋上から落ちたら、また違う世界に飛んだりしないだろうか。
 浮かんだ考えにナマエは頭を振る。その確率はゼロとは言えないが100とも言えない。死ぬ確率はゼロではない。それは、今もそう言えるが。

 とりあえず、屋上の方が全体を見渡すのには好都合だ。ゾンビを振り切り、階段を駆け上がる。扉を蹴り破れば元々開いていたのだろう扉は楽々と開く。そして、視界の端で勢いよく銃を構えた男にナマエはナイフを構えた。

「……人?」
「……生存者、?」

 とりあえず、ナイフを手から落とし両手をあげる。短髪の男――青年にも見える――も構えていた銃をおろし、ナマエに向かってきた。ゾンビではなさそうな歩き方。それに、ちゃんとした言葉を喋っていた。

「よかった、生存者はまだいたのか」
「救助ですか? 遅い到着ですね」
「これでも急いだほうなんだ。それより君はこの学園の?」
「ええ、生徒です」

 ナマエがそう告げれば、男はナマエを上から下まで眺める。血だらけであるが、それはどす黒く彼女のものではないのだろうとの推測ができる。

「まさか、ナイフで切り抜けてきたのか?」
「えぇ、まぁ。銃があればもっと楽なんですが」

 ナマエがそういうと、男はおどろいたように瞬きをした。

「銃を扱えるのか? そのなりで?」
「生憎、こう見えて戦場を駆けまくってましたからね」
「は?」
「あぁ、そうだった。お兄さんは外の人なんで理由をしらないわけだ」

 ナマエは面倒臭そうに頭をかく。

「私は、子供兵だったんだよ」