感染注意(4) 



「先着部隊到着まで丸一日!? ダメだ!! 遅すぎる!! すでに学園はパンデミックなんだぞ!!」

 生い茂る森の中、ピアーズの怒鳴り声が響く。ジープの中でナマエはふっと息を吐いた。服は相変わらず汚いままで抵抗する為の武器もないこの状態。完全に足手まといである。それに、ピアーズ達の武器も少ない。応援がくるまで一日もかかるなら、全員で脱出してしまった方がいいだろう。
 ナマエはそう思いチラリとピアーズを見る。ピアーズは何か決断しかねている状況だ。きっと、ナマエの身の置き場の問題だろうとナマエは決断するとピアーズに力なく笑った。

「私は大丈夫です。全員で脱出するのが正解だと思いますよ」
「でも、君は、」
「大丈夫です。貴方が来るまで切り抜けられたんですよ? 今更です。まぁ、銃があれば心強いんですが」

 ナマエの言葉にピアーズはナマエをじっと見る。ナマエは笑顔をやめて、ピアーズを見た。

「大丈夫です、だから、いきましょう」
「……あぁ、わかったよ。了解、コッチは学園に引き返し生存者を連れて脱出を図る」

 ピアーズがナマエから目をそらし、無線で返事をする。無線相手からは謝罪が聞こえた。



「そういえば、なんですが」

 学園に戻る道すがら、ナマエはピアーズに声をかけた。ナマエの手には車に積んであった予備の銃がある。慣れた手つきで素早くカスタマイズしていく。ナマエにとっては、昔から身についたそれだしこの世界で子供兵として生きてきた経験もあり何も感じていないが、運転するピアーズは違うらしい。まぁ、一般からしたら唯の女子高生が銃を素早く自分好みにカスタマイズできるなど異常である。

「どうした?」
「これが収束したら、なんですが、私はどうなるんでしょうか」

 淡々と告げたナマエに、ピアーズは驚いたような顔でナマエを見た。

「生物テロ、しかも、閉鎖された学園内で身内が起こしたかもしれないそれ。特殊部隊の人間じゃない私はどう考えても処分されるか保護されるかですよね?」

 身内――学園の生徒が生物テロを起こした。それはナマエはわかっている。しかし、ぼやかしたことで何か変わるかもしれないというそれだ。ナマエの言葉にピアーズは難しい顔をする。

「今までの生き残りの方はいったいどうなりました?」
「処分はされない、が、国の保護下におかれる可能性はおおきい」
「なにそれ面倒ですね」

 ピアーズの答えにナマエは小さく返答をした。それを聞いてピアーズはきょとんとする。普通なら安心する筈のそれだからだ。ナマエはそれに気づいていないのか顔をしかめたままだ。

「もはや、死んだことにして世界を渡り歩こうかな。あぁ、でも、傭兵になったところで生物テロに巻き込まれる可能性もあるか」

 ぽつり、とナマエは小さく呟く。そして目頭をほぐした。思ったより疲れが溜まってしまっているらしい。この国の保護下に置かれたとしても、自分の身の上がバレれば結局はCIAのエージェントか何かにされるにちがいない。

「肝が据わってるな」
「まぁ、これでも今まで死線をかいくぐってきましたから」

 ナマエが力なく答えると、ピアーズはまた眉をひそめた。もうすぐ、学園だ。さて、生存者がいるなら何処だろうか。ナマエは眉を顰めて周りを見る。感染者ばかりだ。ナマエが感染しないのが不思議である。

「ピアーズさん、聖堂へ向かいませんか?」
「聖堂?」
「えぇ、学園長が祀ってあります。うん? 祀って? まぁ、学園長の聖堂です。なにかがもしいるならそこでしょう。目の前のあれです」
「……わかった」

 ピアーズがアクセルを踏み、スピードを上げる。ナマエは、迫り来る扉に対ショック姿勢をとった。