世界の中心がボスになるまで(3) 


 それは、ナマエが救われて半年が立った頃である。彼女が野戦病院で右往左往する医者や衛生兵達の指揮をし、怪我人に手当をしていた時だ。
 ボスが一人の重傷者を運び込んできたのは。

「ナマエ! 手当てしてくれ!」
「彼をテントへ!」

 担ぎ込まれた金髪の男性をテントに入れるようにボスに言い、手の空いていた衛生兵を連れてそこに向かう。
 そして、途中で医者を一人拾うと金髪の男性の処置にはいる。邪魔にならないようにボスはテントの外へ出た。バタバタ、バタバタと数人の衛生兵や医者が行ったり来たりするのをボスは見つめる。
 数時間たって、ようやく処置が終わったのか、多少血塗れた手でテントからナマエから出てきた。

「どうだ?」
「処置はしました。目覚めるのには時間がかかりますが、大丈夫だと思いますよ」
「そうか!」
「血を落としにいってきます」
「ついていこう」
「すぐに帰ってきますよ」

 ナマエは呆れながらいうが、ボスは食い下がることはなく一緒にテントを後にする。数分歩くと、近くの水場についた。ナマエはすぐに手についた血を洗い流す。

「で、用件はなんですか?」

 一通り血を洗い流すとナマエはボスにくるりと振り返った。ボスは笑った。

「最近、ゆっくり話していなかっただろう?」
「えぇ、まぁ、そうですね」

 この戦場に入って最初こそはボスと共に戦っていたナマエだが、右往左往する衛生兵や医者を見兼ねて野戦病院で指揮をだすようにしたのだ。だから、会えなくなるのも当然だろう。
 ボスはナマエをまっすぐに見て口を開いた。

「もうじき、政府との契約もきれる」
「はやいですね。……いや、忙しかったからはやく感じたんですかね」
「この場所に思い残しはないか?」
「ええ。ないですよ。医者も衛生兵達も、もうちゃんと自分達で動けるようですし」
「そうか。何か、見つかったか?」
「まだ、です。そう簡単に生きる理由は見つかりませんよ」

 ナマエは肩をすくめる。ボスはそうか、と残念そうに言った。

「でも、まぁ、いつも言っているように自分から死のうなんて思わないので、安心してください」
「それは安心できないだろう」

 呆れるように言うボスに、ナマエはすこしはにかんだ。