感染注意(9) 



「大丈夫か!?」
「大丈夫です」

 隊長と呼ばれた男性――クリスの言葉にナマエは息も絶え絶えに答えた。外傷はない。大きく息を吸い、ナマエは呼吸を整える。化け物はその間にまた大きく飛び上がるとヘリに向かって飛びついた。しかし、それはピアーズのライフル射撃によって阻止された。ピアーズの射撃によって弱ったそれは芝生の上にへたり込んだ。

「次は外さない」

 メラの言葉を皮切りに、化け物に向かっての集中砲火が始まる。ナマエは小さく息を吐き、もう一度銃を構えた。

「おやすみ、ビンディ」

 そう告げて、ナマエは引き鉄をひいた。



 燃えてしまった化け物を見てから、ナマエは周りを見渡した。そろそろフェンスがあぶない気がする。

「そろそろ、」

 ナマエが四人に視線を向けた。その瞬間、ガシャン! というフェンスが崩れた。それを期にゾンビが迫ってくる。

「急げ! 俺が操縦する!!」
「ヘリ、動かせるんですか!?」
「隊長は元空軍だ安心しな!!」

 クリスの言葉に、青年が疑問を口にする。ピアーズの言葉を聞き流しながらヘリに乗り込む。離陸するぞ、との声にナマエはそばの手すりに捕まった。浮遊する感覚にナマエが安堵しかけた瞬間だった。

「ピアーズ!!」

 メラがピアーズを突き飛ばし、化け物の触手に突き刺さる。触手を引き抜く。気がつけば、ナマエはメラのそばによっていた。

「どいてください!」
「ナマエ!?」
「ナマエちゃ、ん」
「生きたければ喋るな!!」


 ナマエはメラを寝かせると、服をめくりメラの患部をみる。メディックもいない今、対処するのは自分しかいない。対処できるのは自分しかいない。

「……内臓の損傷はない」

 ナマエはポケットから裁縫道具を取り出す。あまり、よい選択ではないが、応急処置だ。仕方が無い。

「麻酔がないから、我慢し……!」

ぐらりと揺れた機体に眉を顰める。扉口に何かが捕まっていた。ナマエはかおを顰める。

「ナナン……」
「ナマエは、メラさんを! あれはなんとかする!!」

 ピアーズの言葉にナマエは頷く。

「大丈夫、なのかよ、だって、お前、学生だろ!?」
「年下だからって舐めないでください。私はこう見えて、衛生兵(メディック)として戦闘員として戦場にいましたから」
「は!?」

 青年の言葉を無視してナマエは作業に没頭し始める。また左右に揺れるが、ナマエはそれを気にしていないかのように作業を続ける。


 ナマエが作業が済み顔を上げた時、学園からはヘリはかなり遠ざかっていた。ナナンはいない。いつの間にか簡易の機関銃が置いてあった。

「ナマエ、メラさんは?」
「処置は終わりました。ただ、ちゃんとした医療機器で処置したわけでもありません。ドクターヘリなどを呼べるなら呼ぶべきです」
「わかった、手配しておこう」

 クリスの言葉に、ナマエは息を吐いた。

「……疲れました」

 どっときた疲れにへたりこめば、青年――リッキーに支えられる。

「ナマエ、ちゃん。聞いていいかな?」
「どうぞ、」
「ナマエちゃんは、何で二人と喧嘩をしたんだ?」
「……私は彼女達の学園からでようという誘いを断りました。そこで仲違いしてしまったんです。彼女達を止めていれば、あるいは彼女達と共にでていれば、おこらなかったかもしれませんね」
「なんで、一緒に行かなかったんだよ、友達だったんだろ?」
「私は、この学園にいなければならなりませんでした。それは、養父の意思でしたし、養父との約束の為です」
「約束?」
「……人を、探してるんです。ここを、卒業すれば、また、何処へでも……」

 うつらうつらとするナマエに、ピアーズは肩を竦めた。

「ゆっくりさせてあげよう」
「ええ、」

 リッキーはため息をついて、ナマエから離れた。その時、小さくナマエの口が動く。それは誰にも気づかれることなく朝日にとここんだ。


「ボス、に、会いたい」