選択肢は二つに一つ(3)
「BS、AA?」
「どうかしましたか? スネーク」
「いや、見たことがないワッペンだと……」
普段とは違い黒い軍服に身を包む彼女に首を傾げたスネークに、ナマエは自分を見て「あぁ、服ですか」と返答をした。
普段、ナマエが着ているのはMSFと書かれたワッペンがついている迷彩服だ。MSFも聞いたことがないが、BSAAも聞いたことも見たこともない。どちらかがあの男がいた部隊なのだろうか。スネークはそう推測をつける。FOXHOUNDで彼女を見たことがない。あの男と関わった、一番可能性がありそうなのがそれであるのだが。
「ナマエはFOXHOUNDにいたわけじゃないんだな」
「フォックス……?」
ナマエが首を傾げた。スネークはそれを聞いて息を吐く。そして、なんでもない、と首を振った。
「BSAAはつい最近までお世話になっていた、対生物兵器部隊の名前です。これはその時のものですよ。知らないうちにクローゼットにありました」
「そうなのか」
BSAA。対生物兵器部隊。聞いたことがない。スネークは心の中でそう呟く。大佐あたりなら知っていそうだ。
「MSFは?」
「通称国境なき軍隊の略称です」
「国境なき軍隊?」
「……別名は、アウターヘヴンとも言えるかな」
ナマエの言葉にスネークは固まる。ナマエは眉尻を下げて、言ってしまった言葉に後悔をした。
「国境なき軍隊は傭兵集団。持たざるものの為に銃を握る。そんな銘文がある組織です」
「ナマエはそこに?」
「えぇ、ボスに連れ出されてからはずっと」
スネークは息を飲んだ。アウターヘヴン。それは自分が崩壊させたそれだ。ということは、彼女は、自分が、殺した? 知らなかったとはいえ、彼女を殺した?
グルグルと頭の中を回り始めた考えにスネークの顔色が少し悪くなって行く。ナマエは首を傾げた。
「スネーク?」
「っ、大丈夫だ」
「震えています。大丈夫ではないでしょう?」
「いや、」
ナマエはため息をついて、背伸びをする。そしてわしゃわしゃと頭を撫でた。
「スネーク、一つだけ教えてあげます」
スネークはナマエを見る。ナマエは柔らかく笑った。
「私が記憶するあの世界の最後は、複数人から逃げている所でした」
少し目を見開いたスネークに、ナマエは微笑んだ。
「それに、私はまだ生きてます。勝手に殺さないでください」
最後にそう言うと、ナマエはその場を後にする。スネークはボンヤリとそれを眺めてから、後を追った。