世界は一人の為に回るか否か(2)
「君はあの世界のピカチュウ?」
「ピカァ?」
ナマエは、一匹のピカチュウとともにいた。あの世界にいたピカチュウと同じ姿のそれ(まぁ当たり前なのだが)にナマエが尋ねてみるがピカチュウは首を傾げただけだ。
この世界は、あのトレーナーのレッドくんやピカチュウ、プリンやルカリオの元の世界らしい。プラターヌが出したのは紛れもなくレッドくんが乱闘で使っていたボールだし、時々与えられるそれでもある。ボールの使い方はわかっているが、それ以外はあまりわかっていないのが現状だ。ポケモンは食べられるのだろうか、だなんて質問をスネークとしたことを思い出し、少し笑ってしまう。
君が記憶を取り戻すまでいるといいよー! 、という発言により、プラターヌの手伝い(というより雑用)係になったナマエだが、今は研究所でポケモンの世話をしている。目の前にいるピカチュウも研究所のポケモンだ。
「ナマエー、そろそろカフェに行こうと思うんだけど、一緒に行かないかい?」
「あ、行きます」
ピカチュウを最後に一撫でし、プラターヌの所にナマエは駆け寄った。プラターヌはニコニコとしている。
「いやぁ、ここのポケモンもだいぶ君に懐いたね! 素晴らしいことだよ! ナマエはトレーナーの資質があるんじゃないかな?」
「はは、」
「またお世辞だと思ってるね? お世辞じゃないんだなー、これが!」
研究所を出て、メインストリートを歩く。
「……それとも、ナマエはトレーナーだったのかも」
「いや、違うと思います」
「でも、思い出してないんだろう?」
プラターヌの言葉にナマエは苦笑いを零した。
「焦らなくていいよ、まだたったの一週間じゃないか」
「……はい」
一週間。そう、一週間だ。ナマエがこの世界に飛ばされて。この世界の説明を受けて、不意に鏡を見てみれば子供だった頃の自分の姿で驚いたのにもかかわらず、一週間もたてばなれるものだ。
着ていた服がダボダボだったからと、プラターヌの助手の方が買ってきた服が可愛いらしいもので、自分とは無縁だったそれに困惑したのも懐かしい。実を言うと、今も歯がゆいのだ。もし、セシールに連れられるなりしてフランスのパリを歩くならこういう格好をしていただろうな、と勝手に推測をつける。ボスに見られたら穴があれば入りたい程恥ずかしいだろうな、などという想像をする。今まではそんな想像をする暇などなかったというのに、この世界ではそういう想像をする余裕があるのだ。
「平和、ですね」
ナマエの呟いた言葉に、プラターヌはキョトンとしたがすぐに自慢気に笑った。
「素晴らしいだろう! カロス地方は!」