世界は一人の為に回るか否か(4)
目の前にいる赤いドラゴンにナマエは釘つけだ。赤いドラゴンもドラゴンでナマエを見下ろしている。隻眼のドラゴンにナマエが手を伸ばせば、隻眼のドラゴンはそれを享受した。
「せきがん、」
あの人と同じ、右側。あの人は、確か、拷問で女性を庇って片目を潰していた。このドラゴンはどうなのだろうか。傷跡からして、喧嘩やバトルでついたものかもしれないし、人間に傷つけられたのかもしれない。ナマエがそっと傷跡を撫でる。赤いドラゴンは嫌がらずナマエを見下ろす。
「ボス、」
小さく呟いた言葉に、赤いドランは尻尾を揺らした。
「貴方は、私の大切な人にそっくりだ」
そう呟いてから、ナマエは何処か可笑しく思う。そもそも、違う生き物である。人間とポケモン。しかも、片方は違う世界の、この世界にはいないであろう人間だ。ナマエはもう一度、赤いドラゴンを撫でると背を向けようとした、の、だが。
グイッと服を何かに引っ張られ、バランスを崩し後ろに倒れこむ。赤いドラゴンがそれを受け止めるように動いた。引っ張ったのは間違いなく赤いドラゴンである。ナマエは困惑したような表情で、顔をすりつけてくる赤いドラゴンの頭を撫でる。
「ボス?」
赤いドラゴンは何も言わない。ただ、ゆらゆらと尻尾の炎を揺らすだけだった。
それからしばらくして、中々戻らないナマエを心配してプラターヌがやって来た。そして、ナマエとリザードンを見て驚く。
「珍しい」
「プラターヌ博士」
「いや、ナマエちゃん、本当に凄いよ」
プラターヌ博士は目をキラキラとさせて笑った。
「そのリザードンはね、前のトレーナーに傷つけられて研究所に来たんだ。ほら、隻眼だろう?」
「はい」
ナマエは少し安堵した。やはり、トレーナーに傷つけられたポケモンで、あの人ではない。しかし、ポケモンを傷つけるのは酷い話である。多少の傷なら治るのに、ここまで傷跡が酷いとなるとトレーナーは深く切ったのだろう。
「そこからね、そのリザードンは人に懐かなかったんだ。だから、そのリザードンがそうやってナマエちゃんに抱きついているのは珍しいんだ」
「はぁ、」
「やっぱり、トレーナーの資質があるよ! いや、トレーナーだったのかも!」
ニコニコと笑うプラターヌに、ナマエは苦笑いを零す。リザードンは小さく火を吐いた。