君を中心に世界は回る(1)
気がつけば、嗅ぎ慣れた匂いがした。誰かに揺すられて、ゆっくりと目を開く。そこは兵を運ぶトラックの中で、私は銃を握ってそこにいた。
――夢、だったんだろうか。
外を見れば、森。先程までのカロス地方の美しい街並みなんてものではなく、所々に黒煙が燻っている。彼と一緒にいたはずなのにな、とそばにいたはずの赤色を探す。しかし、周りにいるのは大人や青年の兵士ばかりだ。
「どうした?」
「いや、なんでも」
隣にいた兵士の言葉に首を振る。どうやら、知らない間にまた世界を飛び越えたらしい。あの平和な世界に、汚い私はいらない。そう言われているみたいで、自嘲的な笑みがこぼれた。
隣にいた兵士曰く、私は新兵だそうだ。知らぬ間に着ていた軍服にはBSAAでもMSFでもないワッペンがついている。突如、ふらりと現れて、入隊を願った隊員。記憶にないそれに、ため息をつく。先程からこの隊の隊長はそわそわと落ち着きがない。あまり経験がなさそうな彼が隊長ということは、死にに行くようなものではないだろうか。戦況を言わないで送り込む上部。これは過酷を強いられている証拠ではないだろうか。
――みんなに、会いたい。
薬莢の匂い、焦げたような臭い、煙草の匂い。懐かしいそれに、ぎゅっと膝をだく。
――ボスに、会いたい。
これからも、戦場に行くたびに浮かぶのだろう。もしかしたら、この世界で会えるかもしれない。しかし、傭兵ではない私は世界の戦場を渡り歩くなんて不可。会えるのも、何億分の一の確率でしかきっとない。それに、戦場自体が久々すぎる。この戦場で命を落とす可能性だってある。とりあえず、命を落とさないようにしなければ。そう思って銃を握りしめた。
戦況としては、やはり最悪だった。
押されるに押されすぎた戦況。だいたい、そこまで訓練をしていない兵を送り込むような状況だ。やばいに決まっている。上官は武器商人から武器を買うつもりでいるが、果たして売ってくれるのだろうか。
あたりを見渡してため息をつく。ハイになっているもの、怯えるもの。その中にやはり探しているあの姿はない。はたして、この防衛戦に勝ち目はあるのか。久々に頭をフル回転させ、策を巡らす。優先は国より自分の命になっているが、まぁ、いいだろう。仕方がない。知らない国に愛着はわかないし、愛国心もないのだから。