君を中心に世界は回る(2)
あたりを見渡して、やはりこうなったかとため息をつく。制圧されかけたここは混乱に混乱を呼び、仲間殆ど殺されていた。生き残っているのを確認できるのは、私と、一緒に行動している隣にいた彼と、隊長と、数人の兵士。ただし、片手で数えられる程。あとは私と彼の後ろで震えている役に立ちそうもない上官だけだ。
「なんとかならないのかっ!」
なんとかなるうちに撤退すればいいものを。喚く上官にため息をつけば、隣にいた彼もため息をついた。それに彼を見れば、彼も私を見たようでなんだがわからないが笑みが零れた。向こうは向こうでニヤリと笑う。
「どうすればいいと思う?」
「撤退できるうちに、撤退すればよかったんですよ」
「ああ、そうだな。だが、今撤退すれば蜂の巣になるな」
彼は戦況を読めているらしい。確かに、ここにいる全てを生かそうとすれば撤退は無理だ。
「キングを取るしかないんじゃないですか?」
「それしかなさそうだ」
「まぁ、キングを撮る前にこっちが制圧される可能性もありますが。まぁ、そんなことを考え出したらきりがないですさ」
「じゃあ、取りに行くか。待っていても死ぬだけだ」
彼は勇敢らしい。普通なら新兵二人で、できっこないことだ。しかし、彼が言うように待っていても死ぬだけなのである。私はため息をつくと銃を握った。
「えぇ、行きましょう」
私の返答に、彼は嬉しそうに頷いた。
結果として――。
私と彼は、見事に地点を制圧、そこから形勢を逆転させ、相手の部隊を壊滅させた。一日もかかってしまったそれに、拠点が耐えられるはずもなく、この戦場の生き残りが二人っきりという笑えない状況に陥ってしまったのだが。いや、動けないだけで、生きている人間はいるのだろう。久々の戦場で疲れてしまい、助ける気力はあまりない。
それにしても、彼は何者なのだろうか。訓練をあまり積んでいない新兵としては、銃の扱いに慣れすぎているし、動きも完璧だ。年は二十代前半、いや、もっと手前かもしれない。それが、あんな動きをするなんて。
壊れた壁に持たれて隣に座る彼を見れば、彼は空を見上げていた。それがいつかのボスとかぶって、私は息を飲んだ。
「そういえば、名前を聞いてなかったな」
「私は――」
「ほんともう! なにこれ!!」
遠くから聞こえてきた声に二人で銃を構える。車と共に現れたのは、白人女性と武装した集団だ。
「こりゃあ、やりあった後だな」
「両方自滅ですかね?」
「いや、違いそうだが。まぁ、武器を売る状況ではねぇな」
「無駄足ふんじゃったよ! もう!」
武器を売る。即ち、バイヤーらしい。
「これで生き残りがいれば、そいつらがなんかしたってとこか」
武装集団の一人が言うことに、彼と視線を合わせる。たしかに、こんな惨状で生き残りがいればおかしい。部隊なら撤退しているはずだが、撤退した様子もないのだから。
「どうしますか? 顔をだしますか?」
「そうしても良さそうだな」
わざと音をたてれば、一斉に向く銃口。両手をあげて二人ででる。
「残念だが、武器を買い上げるはずの上官はいないぞ」
彼がそう言いながら近づけば、銃口が下げられた。
「驚いた、若いのがこうしたか」
「いや、わざとじゃないですよ。敵の拠点をつぶしたら、味方も潰れてただけで」
ね、と彼に言えば、な、と返ってくる返事。お互いに愛国心がないというのは感じ取っているのでなんとも思わないのだが、向こうからは異質なのだろう。なんともいえない表情を頂いた。だが、その表情をせず、面白そうに笑う白人の女性。
「君たちには愛国心はないのか?」
「ない」
「あぁ、ないな」
「じゃあ、国にいても仕方がないよね!」
納得したように言う彼女に首をかしげる。
「お二人さん、一緒に世界にいかないか?」
その時、世界の扉が少し開いた気がした。