君を中心に世界は回る(5)



「ナマエはどうしてここにいるんだ?」

 広いホテルで首を傾げた少年兵に、私は苦笑いをした。大方、ルツやアールが何か吹き込んだのかもしれない、と私は少年兵――ヨナをみる。この子は落ち着いている。同じような少年兵であるチコと比べて。周りの環境がそうさせたのかもしれない、と考えていれば、ヨナは困ったように首を傾げた。

「あぁ、ごめん。私がいる理由、ね。人を探してるんだよ」
「人?」
「そう。いるかいないか、生きているのか生きていないのかさえ、わからないけれど」
「変なの」

 ヨナの言葉に笑う。変なの、が一般的な考えなのだろう。いるかいないかわからない人間を探しているのだ。おかしいに決まっている。聞き耳を立てていたらしいルツが首を傾げた。

「へぇ、どんな奴だよ? 家族とか?」
「いえ……でも、大切な人、ですかね」
「恋人とか?」
「いえ、恋人ではありません。でも、その人のためなら命を投げ出してもいいと思う人でした。まぁ、その人からは生きろ、と念を押されましたが」

 ボスを思い浮かべて、自然と笑みがこぼれていたらしい。周りがキョトンとしていた。そして、数秒たてば全員がヒソヒソと話し始める。私とヨナは首を傾げた。ココさんも混じっての騒ぎは、ココさんにかかってきた電話により静まる。ココさん曰く「緊急事態」にて完全に終止符を打たれたそれに、苦笑いを零したのだった。





 ココさんの緊急事態とは、何処かのバイヤーが一枚かませろ! とばかりにハインドDを輸送しに来たらしい。本部から送られてきたそれは、ヘマしたら減給ものらしく、その納入阻止を狙う、ということだ。今回の仕事は、私はジョンさんと共に直援組である。スナイパーの除去だろう。

「さっきの言葉だが――」

 スナイパーの元へ足を運んでいる時、ジョンさんが不意に口を開いた。

「さっきの?」
「あぁ、さっきの君の探してる人物についてだ」
「……あぁ、それですか」
「君は相手のことが好きなのか?」

 私はその質問の真意を聞こうと彼を見た。しかし、彼は私を見ておらず真っ直ぐ前を見ていて、聞ける雰囲気ではない。

「……そうですね、好きです」
「……そうか」
「でも、何処で会えるかもわかりません。生きているのかも、いえ、存在しているかもわかりません。いたとしても、」
「いたとしても?」
「敵かもしれません」

 心中の不安を呟く。
 彼はちらりと私を見る。が、私が今度は真っ直ぐに前を見た。

「相手は覚えてないかもしれません」

 そう、それが不安だった。覚えていなかった時、敵だった時、私はどうすればいい? 彼にいらないと言われたら、それこそ、私は命を投げ出す気がする。
 しかし、マイナスな思考はここで終わりだ。

「……この話はもう終わりです。スナイパーを片付けましょう」

 目の前にあるホテルを見上げる。彼は少し間をおいて「そうだな」と呟いた。
 さあ、戦争の時間だと思考を切り替える。きっと、大丈夫だと自分に言い聞かせて。