君を中心に世界は回る(7)
途中で出会った兵士に連れられて歩く。目の前に現れた、工場のようなそれにナマエは目を見開いた。目の前にある看板には 「国境なき軍隊」と書かれている。レームが「NPOみたいな名前だな」なんて笑うが、ナマエはそれどころではなかった。
――あった、MSFが、あった。
こみ上げてくる喜びに、まだ喜ぶのは早いと心を落ち着かせる。名前が同じだけであって、ボスはいないかもしれないのだ。カズやアマンダ達もいないかもしれない。
「ナマエ、どうかしたの?」
ココ達、進んでるよ
ぼう、と立っていたらしい。ヨナに声をかけられてナマエは「なんでもない」と言って笑った。ヨナは首を傾げたが。警戒しながらヨナと会話しつつ、ココ達に追いつく。目の前の兵士が敬礼するのを見ると、前から上司が来たらしい。
「おはつにおめにかかります、Ms.ヘクティマル」
聞き覚えのある声に、ナマエはぞくりと体を震わせた。ちらり、と前を見れば金髪の男が見えた。記憶のそれと合致した姿と声に、ナマエはぎゅっと手を握りしめる。
「国境なき軍隊の副司令、カズヒラ=ミラーです」
カズ、だ。カズがいる!!
ナマエは叫び声をあげたくなった。だって、いるかもしれない、あの人が。
「お初にお目にかかります。Mr.ミラー」
「ボスはもうすぐで――」
「お初にお目にかかる、Ms.ヘクティマル」
背後から聞こえてきた言葉にナマエは目を見開いた。ヨナがすぐさま後ろを向いて警戒する。ナマエはゆっくりと後ろを向いた。
少し白髪の交じったブラウンの髪を後ろで一つに結っていて、同色の髭を蓄えている。口元と顎には髭を蓄えて、右目には眼帯だ。
――ボス、だ。
ナマエはぎゅっと拳を握った。嬉しさで叫び声をあげそうだったがそれを我慢する。
――あぁ、会えた。
そう感じた瞬間、ほろりと涙が零れた。それを見て、目の前にいた男は苦笑いをした。そして、ぽん、とナマエの頭を撫でる。
「大丈夫か? ルーキー」
「ルーキー、じゃ、ありません」
ナマエが震える声で答えれば、ギョッとしたようにココとレームはナマエを見た。男はそうか、と笑った。男がナマエから手を離すとナマエはそれを名残惜しげに見つめる。男はそれに少し笑う。
「カズ、Ms.ヘクティマルと商談を進めてくれ」
「ああ、だが、ボスはどうするんだ?」
「俺は少しこのルーキーと話してから行く」
ぽんぽん、とボスと呼ばれた男がナマエの頭を叩く。ココ達が顔をしかめるのがわかる。
「知り合いか?」
「いや、」
男は首を左右に振る。男の動作にナマエはゆっくりと目をつむった。
「ジョン、どうして今日は頑なにナマエを止めたんだ?」
先程から落ち着かない様子で葉巻を吸っていたジョンに、トージョが訪ねた。いや、先程、というよりは、ナマエがココ達と出てから落ち着かずにいるのだから、いつものジョンらしくない。
「嫌な予感がする」
「はぁ? 嫌な予感?」
「あぁ」
「それだけで、自分と変えろ、って騒いでいたのか?」
それだけ。他人からすれば、それだけだろう。でも、ジョンの中には何か確信じみたものがあった。
「だが、」
ジョンが何かを言おうとした時、携帯電話がなる。ココからの通信用のそれを慌ててパドメがとった。