君を中心に世界は回る(8)




 例えば、だ。あの世界の延長線がこの世界だったとしたら。きっと、目の前の彼、もしくは彼らは出迎えてくれただろうか。もしくは、あの世界とは違う世界だとしても、目の前の彼がナマエを覚えていたのなら。
 目の前を歩く彼に続いてナマエは廊下を歩いていた。ココ達と別れ、この男についてきたが、どうしたものかと首をかしげる。

「泣き止んだか? ルーキー」
「私はルーキーなんかじゃありませんナマエという名前があります」

 名前の言葉に、男はふっと笑う。そして、また、ぐしゃりとナマエの頭を撫でた。ナマエはそれにくすぐったそうに笑った。しばらくそんなやり取りを重ねた後、男は扉の前に立った。ノックをして、その扉をあける。男に促されて、ナマエは中に入った。

「久しぶりだな、ナマエ」

 部屋に入って、目の前でそう告げた彼に、ナマエは泣きそうになった。彼は、私を知っている。あのボスがいる。ナマエは無意識に彼を求めて手を伸ばした。彼はそれに一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑みを浮かべてそれを享受する。そして、ナマエを抱きしめた。静かにナマエが涙を流すと、彼は慈しむようにそれを拭う。
 ああ、ボスだ。ボスがここにいる。色々な感情がごちゃ混ぜになって何も言えないナマエに対し、男はまた口を開いた。

「本当に、久しぶりだ……」

 ナマエがそれに言葉を返せないでいると、彼の顔はナマエに近くなっていく。ナマエはゆっくりと目を閉じた。鼻先が触れるか、触れないかのところで止まったそれに、ナマエは薄っすらと目を開けた。

「……何年ぶりになる?」

 バチン! というスカンガンの音と共にナマエは苦痛に顔を歪めて男に倒れこんだ。もう一度、男は動けないでいるナマエにスタンガンを向けた。ナマエの表情が驚愕から絶望に変わる。

「そう、三年ぶりだ」

 また、男はナマエにスタンガンをくらわせた。がくりと気を失ったナマエを抱えると、男は捕虜用に作られた手枷や足枷をはめる。動けないようにナマエを固定するとその部屋を後にした。






 パドメがうけた、ココからの電話の内容をまとめると二点になる。ナマエの様子がおかしい、とこの傭兵集団のボスについて調べて欲しいというそれである。パドメがそれを言うと、ジョンは眉間のシワを濃くした。だから、彼女を連れていくな、と渋ったのに。嫌な予感はしていたんだ。珍しくイライラとするジョンは、吐き捨てるように口を開いた。

「ほら、嫌な予感が当たっただろう!」
「うるさいですよ、ジョン。そうなってしまったのは仕方ありませんし。トージョ、調べ上げてくれますか?」
「あぁ、任せておけ!」
「ジョンもイライラしてる暇があれば調べろよ」
「わかってる。……その前に葉巻吸ってくる」

 ジョンは落ち着く為に大きく息をはくと、ベランダに向かった。それを見て、そこにいたメンバーはため息を吐いた。

「マジでジョンのやつ、ナマエのことになると怖いよな」
「それだけ本気とか?」

 お互いに茶化しながらも、部屋は緊張感に包まれていた。ジョンの様子も、見慣れないそれだったからだ。