君を中心に世界は回る(10)
いつにもなくホテルへイラついて帰ってきたココに、一同は首を傾げた。しかも、一人足りないのが目に見えている。ナマエがいない。パソコンで頼まれた事項を調べていたジョンは遅れて入ってくるのではないか、と期待して扉を見るが、最後に入ってきたレームが首を振る。
「ナマエは俺達と一緒じゃねーぞ、ジョン。その様子だと、ナマエはまだ帰ってないらしいな。一杯食わされちまったぞ、ココ」
「ナマエ帰って来てないの!?」
ココが声を荒げ、ジョンは眉間に皺を寄せた。どういうことだ、と告げた声は低い。
「向こうのボスにね、ナマエなら先に帰ったと言われて、ナマエがその施設のどこにもいなかったから戻って来たんだよ」
「なんだと?」
「こりゃあ、やべーことになったな」
ジョンよろしく顔を顰めたレームに、一同も眉間に皺を寄せた。今までなかったような緊急事態である。
「最悪、死んでる可能性もあるぞ、ココ」
レームが言ったその言葉に、ジョンは唇を噛み締めた。変な沈黙が広がる中、別の部屋で調べていたらしいトージョがパソコンを持って現れる。
「やっと相手のことがわかったぞ! ……って、どうしたんだ? この空気」
「今少しやばいことになってますから、空気読んでください、トージョ」
「……トージョの報告は後で知りたい。ココ、向こうでナマエに何があったんだ?」
ジョンが落ち着いた言い方で口を開く。えらく落ち着いたな、ジョン、とレームが言えばジョンは、こんな状況は逆に落ち着くしかないだろう、と返す。
「ま、そりゃそうだな。ナマエがおかしくなったのは、あそこのボスにあってからだ。初対面のはずなのに、懐いているように見えた。あそこのボスもナマエを知ってるようではあったな」
「俺からすれば、ナマエはいく前から少しおかしかった」
「え、どこが?」
「そわそわしていたからな」
ジョンの言葉に、辺りは疑問符を浮かべる。そわそわしていた? あれで?
「だから、私達はあのボスと関わりがあるのかと思ったんだよ。ナマエって、入って来る時に人を探してるって言ってたし、その人なのかもって」
「ナマエが探してる人物はソイツじゃない。ただ、初対面ではあまり人に懐かないナマエが懐いていたのを見ると、相手がその人物に似てたんだろう」
「なんで断言できるんだ?」
「……ただの、勘だ」
ジョンがはぐらかしたことは一目瞭然だ。しかし、今はそこを付くべきではない。ジョンは話をトージョにふる。
「で、トージョ、何がわかったんだ?」
「え? ああ、相手のボスなんだが、昔、何処かの戦場で瀕死の重傷をおったらしい。その名残で片目がない。しかも、ナマエにしろジョンにしろ、関わりがあるかもしれない」
「どういうことです?」
「お前達と同じ国の出身だよ。ジョー=グルージア。聞いたことないか?」
その言葉に、ジョンは固まった。パズルのピースがはまった瞬間だった。そして、眉間の皺を深くする。
「聞いたことあるも、ないも、俺達の隊長だった男の名前だ」
ジョンの言葉に、周りは驚いた。
結局、その日は何もできずに終わった。向こうは向こうで、ナマエは帰ったと言い張るからだ。行方不明、それが今のナマエの状態だ。夜になっても、何も行動できないもどかしさに、ジョンは静かに部屋を抜け出した。銃や暗視スコープなどを装備する。ナマエがいるであろう場所に向かおうとホテルに出た時、ヨナが姿をあらわした。
「何処にいくの? ジョン」
「野暮なことを聞くな、ヨナ」
「ナマエを助けに? 一人で?」
「一人で行った方が今回は効率がいい」
ジョンの言葉に、ヨナは首を傾げた。朝を待って、全員で押しかけた方がいい気がするが。
「朝には戻る。ナマエを連れてな」
「僕もいこうか?」
「いや、いい」
ヨナの申し出にジョンは首を振った。
「……俺が蒔いた種だ。俺が摘むべきだろう。ヨナはココ達に伝言を頼む」
ジョンがヨナの頭を撫でる。
「昼までに帰らなければ、二人とも死んだとおもってくれ、と伝えておいてくれ」