君を中心に世界は回る(11)



 静まり返った森の中をジョンは音もなく歩いていく。思えば、こうなったのは自分のせいなのだろう。でも、どうしても、打ち明けられなかった。それは、自分が傷つかないための予防線であったが。
 目的の傭兵集団が何処にいるか、などというのはわかっている。どこにどう、何があるかさえもわかっている。
 ジョンは慣れたように敵の間をすり抜け、大きな施設の前にまでたどり着いた。
 ダクトから施設内に侵入すれば、施設内に思ったよりも兵がいることがわかった。自分の真下にいる夜の警備をしているのであろう兵達が話している。

「ボスはあの女をどうすると思う?」
「さぁ、自分のものにするか殺すかじゃないか? 噂ではボスの片目を奪った女らしい」
「ほんとかよ!? あのひ弱そうな女が!?」
「そりゃ、お前、女が独房にいるからそう見えるだけだ」

 兵の言葉をジョンは復唱する。独房。きっとナマエはそこにいる。しかし、そこに辿り着くまでの道のりがわからない。ジョンはするりと音もなくその部屋におりると、1人の兵に手刀を落とした。いきなり起こったそれに、残された兵はパニックになるが、兵がジョンを認識する前にジョンが兵の背中に銃を当てる。

「動くな」

 冷徹な声だ、とジョンは何処か他人事のように思った。兵は静かに悲鳴をあげる。

「あの子はどこにいる?」
「あ、あの子?」
「先程お前達が話題にしていた女だ」
「あの女なら、独房にっ、たのむ、殺さないでくれ!」
「独房はどこだ」
「この施設の地下にある。近くの階段から、いける」
「そうか」

 ジョンはそのまま兵に手刀をおとす。兵はまた倒れた。





 ナマエがまたうっすらと意識を取り戻した時だった。慣れない拷問に体力は限界を超えていて、意識がはっきりとしない。被せられた袋のせいであたりの状況も把握できない。ぼんやりとした意識のまま、ナマエは小さく言葉をはいた。ただ、それは空気にすぐに溶け込んでしまった。
 ここで死ぬんだろう、とわけもなく思う。死んでもいいのだが。あたりに人の気配はない。あの人は、ナマエを嬲るだけ嬲って何処かへ行った。

 不意にかちゃりという音が聞こえた。あの人が来たのか、と身構えたナマエとは裏腹に名を呼んだ声が優しかった。しかし、触れられた手にナマエは抵抗する。

「や、だぁ、さわらないで、やだ」
「ナマエ、もう大丈夫だ、ナマエ」
「やだ、たすけて、たすけて、ボス、たすけて、」

 嫌々と錯乱状態にも似た状況に陥るナマエに、その人はナマエの首元に手を伸ばす。ナマエは抵抗するが、あっけなく意識を失った。