君を中心に世界は回る(12)



 ジョンは、目の前で気を失ったナマエをみた。あんな錯乱状態では、連れて行くことができない。
 ナマエのあんな姿は、これまでで初めて見た。いつも、凛としていたからで、泣きじゃくる彼女を宥めたのが一度あるだけだ。ナマエの足かせを外し、手枷を外そうとした時誰かが来るのがわかった。咄嗟に隠れ場所をさぐるが、ない。ジョンが銃を構えたその時、現れたのはあの男だった。向こうも向こうで銃を構えている。
 ジョンはその男を見て、顔を歪めた。これなら、ナマエが間違えるのも仕方が無いと。

「お前から来てくれるとはな。ジャック。久しぶりだな」
「……あぁ、三年ぶりだ」
「そう、三年ぶりだ。お前達を探していたよ」
「ほっといてくれてよかったんだが」
「ほっておく? 優秀な部下を放っておくわけがないだろう」
「生きていたんだな」
「あぁ、お陰様でな」

 緊張感に包まれる中、男はまた言葉を繋げる。

「あの時、お前達がめちゃくちゃにしたせいで、俺達の計画はパァだ。しかも、片目まで失った! ルーキーはルーキーらしく戦場で死ねばよいものを!」
「なんで俺たちが生きてるとわかったんだ?」
「お前達があの白い髪の女と行くのを見たからな」

 男はチラリとナマエを見る。

「それにしても、思ったよりこいつが間抜けで助かった。俺を見ただけで泣き出すんだからな。取り押さえるのは実に簡単だったよ。だいてやれば、嫌だという癖にboss(上司)に助けを求める。実に愉快だった」

 男の言葉に、ジョンはどこかでプツリという音がしたような気がした。ふつふつと湧き上がる怒りに、銃の引き金を軽く触る。男は気づいていないのか、悠長にナマエを抱いた感想だとか、今後ナマエとジョンをどうするのかだなんて言っている。
 ジョンは躊躇いなく引き金を引いた。サプレッサーがついていた為音はほとんどない。しかし、男は間一髪でそれを避けた。腕から血を流している。しまった、と一気にジョンなら血の気が引く。怒りに任せての行動だった。どちらが不利かなど考えていない。男が銃口を自分ではなくナマエに向けるのを見て、ジョンは躊躇いなく飛び込んだ。パン、という乾いた音が響く。ジョンは叫び出したくなったが、そのまま男にタックルし男をこかすと銃を解体する。そして、サプレッサー付きの銃で男にとどめを刺した。