君を中心に世界は回る(13)



 ジョンには、誰にも告げていない秘密がある。例えば、引っ越してしまったが隣の家にすんでいた女の子が初恋だとか、山に遭難した際に蜘蛛を食べただとか、墓場にまで持っていこうと決めている秘密だ。その中でも、重大な秘密があった。誰にも打ち明けられない秘密だ。
 ジョンには3回死んだ記憶がある。
 いや、3回死んだとは言い過ぎかもしれない。絶命したのは三回目だけで、後は仮死だ。その記憶の中で、彼は伝説の兵士――ボス、と呼ばれる存在であったのだ。幼い頃に思い出したジョンにとって、多くが戦場であるそれただの恐怖だった。しかし、時としてそれは有意義にもなる。彼は恐怖感覚と引き換えに、言葉や武器の扱い方、はっきりと「思い出して」いく。そして、大人びた子供になった彼は、隣の家に住んでいるジョンをしたっていた女の子が引っ越すために去っていく姿に、その記憶を思い出したのである。ナマエ、とよんでいた女性が戦場となった世界に消えていく記憶を。
 そこからだ。その記憶が自分のものなのだ、と理解したのも。自分が生まれ変わってしまった、と理解したのも。


 ジョンは今度こそナマエの手枷を外す。彼女に被せられた袋を外せば、あの時のままの彼女がいた。


 ジョンが自分を思い出したのがそのタイミングなら、ナマエが思い出したのはどのタイミングなのだろうか。あの引っ越しの際、まだ、彼女は幼い唯の女の子だったはずだ。兵に志願した、と風の噂で聞いた時にナマエを見てもまだ普通の少女だった。切り替わったとすれば、あの戦場へ向かうトラックの中だ。顔を伏せた一瞬で雰囲気が変わった。彼女の動きは自分の記憶の中にあるそれだ。あぁ、ようやく会えた。ようやく共にいれるのだ、と思った時、ジョンは心の底から嬉しかった。彼女が自分の過去の姿を追い求めていたとしても。

「ナマエが、気づいてくれると踏んでたんだがな」

 そう、それを期待して黙っていた。でも、彼女は気づかなかった。だからこそ、過去の自分とよく似たこの男に触れてしまった。

 ジョンはナマエを姫だきにする。先ほどの射撃で片目になってしまってはいるが、それは慣れている。あとは、ここから連れ出すだけだ。