君を中心に世界は回る(16)
ナマエがゆっくりと瞼をあける。前にもこんなことがあったな、とはっきりとしない視界であたりをみた。サイドテーブルには花がいけてあり、その奥に人が座っているが見えた。読みかけであろう本が落ちかけている。逆を見ればカーテンがあけてある窓からは空が見えた。あの夢と同じく快晴である。
しっかりと定まってきた視界にナマエは目線をまた人物に戻し、息を呑んだ。
眼帯をつけている彼は、ボスにそっくりだった。ナマエに暴行を加えたあの上司にも似ているが。
なんで、だとか、どうして、だとかいう気持ちが湧き上がる。そっと手を伸ばした時、彼の持っていた本――バイクのカタログが落ちた。彼はその音で起きたらしい。びくり、と身体を動かして辺りをキョロキョロと見渡す。ナマエを見ると、目を見開いて驚いた。
「ナマエ! 起きたのか! よかった、今、医者を――ナマエ?」
医者を呼びにいこうとした彼――ジョンは、ナマエが彼の服を握ったことにより阻止された。彼がナマエを見るが、俯いている為表情は見えない。ただ、彼女が、行かないで、と小さく呟いたのが聞こえた。ジョンはゆっくりとナマエのベッドに腰掛け、彼女の頭を撫でる。
「ナマエ、俺にはナマエに話さなければいけないことがいくつもある」
そう切り出したジョンに、ナマエは顔を上げた。
「でも、その前にナマエの質問に答える」
そう言って笑ったジョンに、ナマエは口を開いた。
「……ココ、達は?」
「……先に次の仕事に行ってる。ナマエが退院すれば、そこへ向かう段取りだ」
「眼帯、どうしたの?」
「ああ、色々あってな、右目が潰れたからつけた。片目の行動は慣れてるし、やっぱりこれがないと俺という気がしないし、誰かさんも気づきづらいみたいだからな」
ジョンの言葉に、ナマエはきょとんとした。今思えば、前だって片目を失ったのは29の時だった、だなんて呟くジョンにナマエはふにゃり、と顔を歪めた。
「ボス?」
「やっと気づいてくれたな、ナマエ」
そう言って笑うジョンにナマエは抱きついた。