君を地軸に逆回転(-2) 
 




 落下。まさしく、落下である。不安定なそれにボスは慌てて腰につけている筈のボールに手を伸ばす、が、ない。自分よりも先に落下していくナマエの服を掴むと、自分の方へ抱き寄せた。また、ナマエの大きさが変わっている。ボスが顔をしかめていれば、急に減速する体。見れば、ナマエが何処からか出した傘を開いている。一瞬唖然としたボスだったが、緩やかに地面に着地したことで気を紛らわせた。ナマエを見れば、珍しく渋い顔である。服装も年齢もMSFにいた頃に近い。自身の服装はMSFの、ナマエと別れる際の服装に変わっている。両腕は勿論揃っている。

「……ナマエ?」

 ボスの呼びかけにナマエは苦笑いを浮かべた。ナマエはナマエで、ややこしいことになったと思っている。だって、あの世界からポケモンにいた世界に行ったということは、この世界は件の世界ということで。

「……は、ナマエ?」

 背後から聞こえてきたボスそっくりな声にナマエは頭を抱えたくなった。



「ナマエ、会いたかったよ!!」

 そういったマスターにナマエは苦笑いを浮かべた。よく、この状態をスルーして、自分に声をかけたな、と。ナマエの左右にはそっくりな二人がいて火花を散らしているのだからナマエは頭痛を感じた。やめてほしい。ポケモンのいる世界で穏やかに暮らしたかった。しばらくはここにいるよね、ちゃんと部屋もそのままにしているよ、と有無を言わせないマスターの言葉にナマエは少々項垂れて「イエス、サー」と返事をする。その言葉にマスターは笑った。


 スネークは眉間にシワを寄せて、その光景を眺めていた。異空間に飛ばされて会えないと思っていた想い人がこの世界に帰ってきたのはいい。問題は、そのオマケである。自分そっくりな彼は眼帯をつけて、彼女と同じ部隊の服を着ていた。自分が出会った頃よりは幾分か若い彼は「ビッグボス」――彼女からは「ボス」と呼ばれている辺り、自分の父親なのだろう。幸せそうな彼女の笑顔に、自分があの立場に立てないことを知る。父親――ビッグボスは、スネークの視線から隠すようにさりげなくナマエの背後にたった。
 自分では、ダメだったのだろうか。だなんて自問をするが答えなど出る筈がなくて。これならば、いっそあのまま別れさせてくれればよかったのに。その方が、きっと彼女を想って幸せな日々を送れた。
 ふと、あの男が自分の方を振り返り、口を動かすのが見えた。スネークはその言葉を正しく受け取り、ぎゅっと拳を握る。

「ナマエは、渡さない」

 優越感に慕ったようなその表情には苛立ちに繋がるだけで。顔を背けて歩き出せば、スネーク、と彼女が自分を呼ぶ声が聞こえてスネークは振り返った。

「また、よろしくお願いします」

 そうはにかんで笑った彼女に、見たことのないその表情にまた心臓が跳ねたのは仕方がないことなのだろう。願わくば、自分がそうさせたかった。もう、叶わないことだろうが。
スネークはぶっきらぼうに「あぁ、よろしく頼む」と返事をした。