君を地軸に逆回転(-3)
現れたモノに、すかさず銃を撃ったのは正解であったらしい。何かよくわからないそれは、ホラー映画のそれに似ている。はっきり言って、自身の苦手なそれであるが、この世界について知っているのだろうナマエはぐったりとしていた。気を失っているらしい。とりあえず、安全な場所に移動せねばならないとナマエを抱えた時、扉が開く音を聞いてボスは銃を構えた。
「生存者、か?」
目の前に現れた男は、何処ぞの軍隊のような格好をしていた。体格だってそうだ。筋肉質なそれは警察ではないことがわかる。男は視線をボスの腕の中の存在へと向ける。
「ナマエ、?」
口に出された声は紛れもなくナマエの名だ。ナマエの知り合いか、とボスは小さく息を吐く。なんとか、なりそうだ。
さて、この世界のナマエはBSAAという組織に属していたらしい。バイオテロ専属の国連部隊、という言葉にこの世界は「核の脅威」よりも「生物兵器の脅威」の方が大きいと知る。ナマエはまだ眠ったままだ。ピアーズ、という兵士を庇った彼女は、昏睡状態にあった。沈没船に共に沈んだものだと考えられていた彼女は、BSAAでも国でも死んだものだと考えられていた。殉職、である。しかし、ナマエを抱えて別の場所に現れたボスに、BSAAは騒然としていた。正体も何もなく、国籍さえもないだろうボスは、ナマエの眠る病室にいる。隔離されているとも言えるが。
「アンタは一体何者なんだ?」
目の前で眉間にシワを寄せる男――クリス・レッドフィールドと名乗った男に、ボスはなんと答えるか迷う。この世界では、肩書きも何もない。名は、捨てた。
「……ただの傭兵だ」
迷った末に答えた言葉に、男の隣にいた金髪の女性――ジル・バレンタインと名乗った女性が眉間にシワを寄せる。
「傭兵が、何故ナマエを?」
「さぁな、俺自身、気づいたらナマエとあの部屋にいた」
「貴方のことは調べさせてもらったわ。でも、貴方の記録は十年前で止まっていたの。貴方も殉職、と言われる立場よ」
「因みに、俺の最後の記録は何になっているんだ?」
「……グリーンベレーよ。そこで殉職してることになってるわ」
なるほど、とボスは納得する。どの世界でも同じような道筋を歩んできているらしかった。
「そのあとは、非正規工作員をしていたからな、存在を抹消されたんだろう」
「非正規工作員を?」
「すぐにやめて、傭兵になったがな」
非正規工作員といえば、調べ上げることができない経歴だ。信憑性は多少は増す。
「非正規工作員なら、ナマエと何処で知り合った?」
「戦場だ」
すらり、と出た言葉は自分の知らないそれである。
「非正規工作員と言っても、準軍備部隊にいたからな。そこで別れて、こちらも探してはいたんだが、再会があんな場所になるとは思わなかった」
「ちょっと待って。ナマエが探してたのって、」
ジルの言葉に続くように、クリスが答える。
「『ボス』はアンタだったのか」
「おそらく、な」
そう返事をし、ボスは眠り続けるナマエを見る。はやく、目を覚ましてくれ、と願いながら。