君を地軸に逆回転(-4)
「ボスは、歴史に強い方ですか?」
ナマエの問いにボスはきょとんとした表情を浮かべる。歴史、といえば、現代史――所謂第一次世界大戦だとかそういう歴史は詳しいと自負できる。まぁ、それに近い時代を生きたのだから当たり前なのかもしれないが。
「現代史は得意だ」
「中世以前はどうです?」
「例えば?」
「そうですね、アメリカだと開拓史以前になるかもしれません。Romance of Three Kingdoms、Warring States Period と言われる時代です」
「あぁ、聞いたことはあるがちゃんとは知らないな。後者に至っては武者とか切腹とかいうレベルだ。それがどうしたんだ?」
ボスの言葉にナマエはなんとも言えない表情を浮かべる。
「その二つが混ざってしまった世界なんです、ここ」
ナマエの言葉に、ボスは瞬きをした。また、ナマエが言うに、自分達の装備は最先端らしい。周りが持っている銃は一発装填なおかつ詰め火薬の種子島言われるそれ。時たま最先端のようなそれをもつ人はいるが、ナマエが認識している二人のみ。充分にバランスブレイカーになりうる存在、だという。
「移動手段も馬です」
「乗馬はまかせろ。馬の扱いは慣れてる」
「ふふ、それじゃあ、ボスに任せますね」
そういうナマエの傍らには馬だ。白いそれは競走馬に似ている。うろちょろとしていたのをナマエが連れて来たのだが、ちゃんと手綱がついているあたり、どう見ても人のそれである。主人とはぐれたのか、とボスが撫でてやると嬉しそうに馬は鼻を押し付けた。
「……火薬の臭いがするな」
風に乗って臭ってきた臭いにボスは顔をしかめる。
「近くで誰かが争っているのもしれません。行って見ますか?」
尋ねるナマエに、ボスはすぐに頷く。二人で馬に乗るとボスは馬の腹を蹴った。
目の前に広がるその光景にボスは感嘆のため息を吐いた。迫力がある。映画のようだ。同じ命をかける戦いのはずなのに、同じ「戦争」といわれるそれなのに、どうしてこうも違いができたのか。命のやり取りは同じだが、多数対多数、銃があまりにも少ない戦場を、ボスはしばらく眺めていたい気持ちになった。相手は化け物だが、あの世界の化け物よりは可愛げがある。ナマエはナマエで見知った人をみつけたらしい。
「ナマエ、どうした?」
「いえ、知り合いが押されているみたいなので」
「加勢するか? 人間の味方をすればいいんだろう?」
「いいんですか?」
「ああ、今更だ」
そう言ったボスの手にはアサルトライフルが握られている。ナマエはそれを見て自らも銃を握る。
「敵は俺たちに気づいていない。奇襲をかけるのがよさそうだ」
「そうですね」
ナマエの言葉に、ボスはまた馬の腹を蹴る。勢い良く走り出したそれは崖を駆け下り、砦に近づいていく。ナマエがアサルトライフルで敵を倒しながら進むそれに妖魔達もタジタジだ。あっという間に砦を救援し終えると、そこにいた人物はポカンとした表情でボスを見た。
「大丈夫ですか? 夏侯覇さん」
ナマエがひょこりとボスの後ろから顔をだす。夏侯覇はそれを見て、数秒固まったがすぐに顔を振って我に戻った。
「ナマエ!! 無事だったんだな!」
「? それはこちらの台詞ですが、」
「うんうん、そうだよな!」
だめだこいつ、話を聞いていないと顔をしかめたナマエに夏侯覇は続ける。
「ったく、俺もだけど孫市さんも父さんも探してたんだぜ……って、ナマエ、その前にいる人は? 仲間ってことはわかるけど」
「私が探していた人です」
「見つかったのか! よかったな!!」
「ナマエが世話になったようだな」
「いえいえ! 俺がお世話になったんですって!」
「このままお互い、自己紹介をしたいところだが、」
ボスはそこで話を区切り、辺りをみる。ここら一体の敵は居ないが、夏侯覇の状況を考えると他もおされているだろう。
「そうですね、他も救援したほうがよさそうです」
「それなら、先に半兵衛殿と合流しましょう!」
俺が案内します!
そういった夏侯覇に、ボスはきょとんとする。ソレで敵中を突破するつもりなのか、だとか、むしろ三人で大群の中に突っ込む気か、だとか言いたいところだ。ナマエを様子を伺えば、視線の意味に気づいたのだろうナマエが口を開く。
「mighty warrior(一騎当千)なんで、大丈夫ですよ」
ナマエの言葉にボスは首を傾げた。しかし、その意味を理解するのには時間がかからなかった。