太陽に会いたい




 ナマエには二人の父と、二人の母。三人の兄弟と祖父がいる。

 まず、祖父。血は繋がっていない。ゼロやらオウやらと呼ばれる祖父をナマエはグランパと呼ぶ。それは小さい頃からの癖で、自分と仲良しな兄弟と父達が良い顔をしないのだが、ナマエはグランパと呼び続けている。それは、いつも何処か寂しそうに笑う彼が本当に嬉しそうに笑うからだ。後、彼のいれる紅茶が好き。今はもう病院にいて、殆ど起きれないのだけれど。

 母。一人目はあったことがない。黒い髪に黒い目の女性だ。日系らしい。自分の髪色がすこし黒がかっているのは彼女の影響。二人目の母は、夢にもでてくる女性だ。彼女とはなかなか会えないが、いつも会うと沢山の服やお菓子をくれる。あと、バイクのおもちゃとか。それは今でも変わらないし、これからもきっと変わらない。

 兄弟。三つ子の片割れ達、もう一人はナマエは弟と言い張る。片割れ達はすぐに引き離されてしまったらしく見たこともない。いや、嘘だ。二人ともを写真で見たことがあるし、片方にいたってはちゃんと出会った。向こうは自分の出生については知らなそうだったから「貴方の兄妹なの」とは言わなかったが。もう片方は知らない。でも、写真でみる金髪には憧れを抱いた。
 ちなみに弟はジョージ=シアーズのことだ。見た目は完全に逆どころかすごいことになっているが、ナマエは彼を弟だと言い張る。クラーク博士という女性にそう告げられたのもあるし、なんていうか、プライドの問題でもある。それはジョージも一緒らしく、彼は彼でナマエを妹だと言い張るのだが。

 父。ややこしいが、両方血がつながっているのは確かだ。片方は、ビッグボスと呼ばれた伝説の英雄。彼の細胞を利用した計画で産まれたのだし、何よりもナマエはビッグボスと数年だが一緒にいた。彼がアメリカから消えてしまう寸前まで。最初は怖かった。まぁ、「自分」なのだから気味が悪いし勝手に作られたのだから怒っていたのだろう。しかしナマエに罪はないと思ったのかなんなのか、彼は結局ナマエを悪いようにはせず、彼がアメリカにいる間は親子であったし、ナマエが年を取らないことに憤慨してくれたりした。ので、ナマエは今となっては罪人でもあんな彼が好きだし、尊敬もしている。死んでしまった今でも。二人目の父は、弟でもあるジョージ=シアーズだ。今となっては大統領の彼が何を思ったか知らないが、ナマエを養子にするなんて言い出したのだ。まぁ、ナマエも拒む理由はなく、新しい戸籍が与えられる為にその話に乗ったのだが。

 父や兄弟達にあって、ナマエにないものがある。
 ――コードネームだ。「スネーク」という。
父はネイキッド、片割れ達はソリッドにリキッド、そしてジョージがソリダス。ナマエにだけない。軍に所属していないから、と言われればそうかもしれないが、ナマエだって一応CQCができるし、射撃の腕も良いし、一般の兵士よりも強い。戦争の経験も少しはある。
 目の色、髪の色、肌の色、生殖能力を持っていないこと、頭が良く身体能力が並外れていること、ぐらいしか共通点はないのではないか。

 ホームドラマを見ながらナマエはそんなことを考える。
 どうやらソファで寝ていたらしく、起きたらジョージは「夜には戻る」という書き置きを残し消えてしまっていた。暇で暇で仕方がなかったナマエがテレビをつけたらホームドラマがしていて、そういう考えが浮かんでかて冒頭になる。

「ダディ、帰ってこないかなぁ」

 中身はもうとっくに成人しているはずなのに、ナマエはそばにあった色あせたぬいぐるみに抱きついた。