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火祀くんと家族の話
火祀くんの家族について、俺は何も知らない。どうやらしっているのはアキネちゃんと、画家ぐらいみたいだ。偶に火祀くんの部屋に行くことがあるけれど、そこには一枚も家族の写真はない。最近そこに人形が加わったけれども。
「火祀くんの家族ってどういう人なんですか?」
そう尋ねれば、縁側で本を読んでいた火祀くんは俺を見上げた。顔が赤らんでいる。……この人酒飲まされたな。道理で周りが死屍累々になっているわけだ。
「家族ってどっちの家族だ」
「どっち? どっちってどういうこと?」
まりえさんが火祀くんの背中に抱きついた。膝の上にいたクリを押しつぶすのを耐えた火祀くんは、離せ! と吠えるようにまりえさんを睨む。
「おおおう、子犬が吠えてら」
そう笑いながら画家が酒をまた飲む。
「どういうことも、クソもねぇよ。家族が二つあんだよ」
「意味がわからないよ、純。酔ってんの?」
「酔ってねぇよ。や、酔ってるけど。最初の家族が死んで、養子に入ったら養子の家族も
死んだからどっちの家族の死因だって聞いてんだ」
その言葉に、ピシリと俺が固まる。火祀くんは笑う。
「驚くのははえーよ、双方ともに何処のミステリー小説かって言う話だからな」
「笑いごとじゃ……」
「笑いごとだよ」
そう言い放った火祀くんは本当に笑った。
「笑いごとでしかねぇよ、あんなこと。なんだよ、生きてんのかよ、なんでアイツが二回も奪って行くんだよ。もう清々しく高遠に殺されときゃよかったんだよ」
「純、今の言葉は好かないな」
「だって!」
龍さんに噛み付くように火祀くんは口を開く。
「だって! アイツがしんでりゃ、俺の両親は死ななかった! 養子になることも、養子の家族が死ぬこともなかった!」
「アイツ?」
「アイツが殺した、二つとも」
火祀くんの言葉に龍さんが微かに眉間にシワを寄せた。殺した、とはどういうことだろうか。殺人事件に巻き込まれた、それとも、事故か何かで。クリとシロが火祀くんを心配そうに見つめる。龍さんが何かを告げようと口を開く。
「純、」
「そうなる運命だった? 違う。運命ならアイツは死んでるはずだ。なんでアイツが生きてて、俺の家族が死んでるんだ? 俺はあの時に死んだのに、どうしてアイツは生きてる?」
そうブツブツと呟く様は始めてで。戸惑う俺たちに、画家が息を吐いて火祀くんから酒を奪い取ると、火祀くんを担いだ。何すんだ、と呟く様に告げた火祀くんに、画家が口を開く。
「今日は寝ろ。今日のお前の酔い方はイイもんじゃない」
その言葉に火祀くんは大人しく連れていかれる。
――現実は小説よりも奇なりと言いますし。
頭の中で、近宮さんがミステリアスに笑って告げた気がした。
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