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火祀くんと帰り道



「あれ」

 火祀くんを見かけたのは、ちょうど夕方の頃だった。田代にからまれながら帰っている途中である。火祀くんは立ち止まって頭を抱えているのが遠目でもわかる。俺が反応したことに目敏く気づいた田代は「知り合い?」と俺に尋ねる。

「同じアパートに住んでる人」
「ふうん、あの制服は浪漫学園ね」

 そう当たり前のように告げた田代に「浪漫学園?」と首をかしげる。

「ここから近い私立の学校よ。部活もそこそこ盛んって感じかな」
「私立の学校、かぁ」

 ということは、結構お金持ちなのだろうか。だから一人暮らしする余裕があるとか?でも、余裕があるならもう少し違うマンションとかに住んでいそうな気もする。

「浪漫学園と言えば、王子様と魔法使いがいるらしいわよ。何でも女子生徒の人気を二分してるとかしてないとか。あと、声楽部の人魚姫もきいたことあるわ」

 まるでおとぎ話みたいだな、と思いながら田代の話に相づちを打っていると、火祀くんが振り向いた。

「夕士じゃねえか。今から帰りか?」
「ええ、そうっすけど。どうしたんですか?」

 そう言いながら火祀くんに近づく。火祀くんの鞄がおちていて、中には真っ赤な薔薇の花が詰め込まれているのがわかる。そしてその上にはちょこんと白色が乗っていた。

「薔薇はともかく、こいつが帰ってくれないんだよ」
「鳩?」

 そう、真っ白なそれは鳩だ。でも、そこらにいる鳩よりは小さい気がする。鳩を抱き上げた火祀くんはそれを投げるけども、羽ばたいた鳩はまた火祀くんの鞄に降りた。どうやらコレを繰り返していたらしい。何も事情をしらない田代が口を開く。

「わぁ、すごい数の薔薇。どうしたんですか?」
「嫌がらせだ」

 そうはっきり告げた田代に告げた火祀くんは大きくため息をついて、いるか? と尋ねる。

「いいんですか?」
「持って帰ってもな」

 火祀くんは何も持っていない手を田代に近づけた。首をかしげた俺たちに、火祀くんはどこからともなく薔薇の花を取り出す。

「は、?」
「わぁ! すごい!」

 そう手を叩いた田代に、火祀くんは薔薇を渡す。数輪渡したところで「後はいつも通りるり子さんに頼むか」と息を吐いて鞄を抱える。そして、鳩を見て一言。

「お前はさっさと近宮んところ帰れ」

 その声に鳩は返事をするようにないた。しかし、のく気はないらしい。もう一度大きくため息をついた火祀くんは鞄を自転車の前かごに入れる。

「夕士、乗ってくか?」
「え、いいんですか?」
「別に向かう場所は一緒だしな」

 火祀くんはそういって自転車に乗る。俺は田代にことわって、火祀くんの後ろに乗った。

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