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火祀くんと幽霊の話



「迎え火、とは?」

 そう首を傾げた彼女に、知らない? とアキネちゃんが首を傾げた。未だに不機嫌そうな火祀くんは「コイツ日本に殆どいなかったから知らないと思うぞ」と告げた。

「ああ、そうか、大きな魔術団だから海外も回るもんね」
「ええ、まぁ、兄も無神論者と似非キリスト教徒ですから」
「似非?」
「兄を育てた父親がキリスト教徒だったので」
「えーと、兄を育てた父親……?」

 俺が首を傾げる。火祀くんが口を開く。

「コイツの家族編成、『事実は小説よりも奇なり』だからな」
「あっはっは。的を射えていますね。生き別れた兄に、異母兄弟が二人いますし、全員両親と呼べる人間がいませんから、キャラクター映えしますね」

 あっけらかんと笑ってみせた彼女に俺は面を食らう。笑い事、ではないと思うのだ。


「先輩だってそうでしょう? 現実は人の想像がつかないことが色々起こるもの、です。予想していてもそれを上回ることが次々起きる。だから、楽しい」
「両親が死んだのが笑い事?」
「生憎、父親の記憶はありませんから。母親も小説のような理由でしたし、今となっては、ね。母親が死ななければ私は兄達と会うことはなかった。そういう運命だったんですよ」

 肩をすくめた彼女はこちらを見て笑う。

「なので、貴方達と出会ったのも何か運命なんでしょう」
「純くんと出会ったのも運命だったってわけだ」

 そうケラケラ笑った詩人に彼女は少し考えて口を開く。

「それはある意味予定調和、でしょうかね。で、迎え火、とは?」
「火を焚いて、ご先祖様をお迎えするの」

 予定調和? と首を傾げた俺は、火祀くんが頷くのを見逃さなかった。アキネちゃんの言葉に、彼女は目を瞬く。

「ああ、なるほど。仏教的なソレ、ですかね。迎えたらどうですか?」
「お前こそやればいいだろ。会えるかもしれないぞ」

 不機嫌そうに頬杖をついた火祀くんに彼女は「生憎天の上にいるのか地の底にいるのかわかりませんからね、戻ってなんて来てくれないでしょう」だなんて告げる。

「天国にいるか地獄にいるかわからないってコト、ですか?」
「親が何していたか、だなんて残された子供が知る術はあまりにも乏しいでしょう?」
「でも、エーと、近宮さんの母親ってすごいマジシャンだし、天国にいるんじゃないですか?」
「ふふふ、ありがとうございます」

 長谷の言葉に彼女はお礼を告げる。

「会いたくならない?」
「そうですね。本当は、私も会いたいんだと思います。しかし、それを覆い隠す程の色んな気持ちがありますから。それは先輩も一緒でしょうね。そういう事で向けられる周りの視線、だとか」

 彼女はそう言って、指を折る。

「自分を支える為の気持ち、だとか、まだこんな自分を見せるわけにはいかないという気持ち、会った後の反動。しかし、それよりも、恐怖が勝つ」
「……亡くなった人が現れるから? でも、それは怖いことじゃないよ」

 アキネちゃんの言葉に火祀くんが口を開く。

「コイツが幽霊とか怖がるタチかよ。生きてる人間の方が怖いって思ってるタイプだぞ」
「失礼な。ジャパニーズホラー映画は一応苦手ですよ。スプラッタは余裕ですが。生きてる人間は対処できますが、死んでる人間は対処できないでしょう。まぁ、確かに生きてる人間のちょっとドロドロしたところはよく見て来ましたが」
「対応できるか出来ないかで苦手とか決めんなよ」
「私の家ではそうなんですよ。兄達はジャパニーズホラーも怖がりませんからね。私が怖がってたら、『死んでても殺すから大丈夫だよ』とか『ああ、この子は生きてるうちに某人物に会えば救われてたかもしれませんね。同情はしませんが』とか『幽霊相手のビジネスか。面白そうだ。同情をするつもりはないけど』とか言われた私の心情がわかりますか」

 バシバシと火祀くんの腕を叩いた彼女に、さっきの雰囲気は何処へやら、周りはゲラゲラ笑う。

「お兄さん達は対応する気満々なんだ!」
「そうなんですよ!」
「お前も同類だろ」
「そういう純くんも対応できるか出来ないかで恐怖対象決める節あるよ?」

 アキネちゃんの言葉に、火祀くんは「触れれなきゃ対応する術ないだろ」と告げる。そりゃそうだ。普通は触れなきゃ対処はできないのだ。



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