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火祀くんは名探偵?
「ああ、いたんだね、名探偵」
そう笑いながらやってきたのは骨董屋だ。騒いでいる中で彼はひょうひょうとした足取りでやってきた。チラリ、と骨董屋は彼女に目をやると、おお! 君は! と手を叩く。
「レイコの娘じゃないか!」
そうニコニコと笑った骨董屋に、彼女は目をパチパチと瞬いてみせる。火祀くんが「……知り合いか?」と尋ねれば、彼女はしばらく考えた後手をポンと叩いた。
「ああ、名も知らないマジシャンさんですね。相変わらずですね」
「ははは、骨董屋だよ。私はマジシャンではないさ」
そう笑った骨董屋はポンと彼女の頭を撫でる。
「レイコの事があって、心配していたんだよ。元気そうで何よりだ。で、どうして君がこのアパートに?」
「先輩を連れて帰ってきたんですよ」
「センパイ? と、いうと――」
彼女は火祀くんを指差した。火祀くんはやれやれと言うような顔だ。
「ああ、名探偵が先輩かね。ライバル登場というところかな?」
「ちげーよ。第一、俺は名探偵じゃない」
「しかし、仲はいいと見える。あのペンダントを贈った相手は彼女だと見た」
そうあっけらかんと意地悪そうに告げた骨董屋に、田中さんやら詩人、古本屋が火祀くんを見た。
「ペンダント?」
「この前、古本屋が純くんに売ってた魔除けのアレかな?」
「青春してるねぇ!」
「違う!」
そう吠えた火祀くんに、彼女は何も言わない。なんか言えよ! と彼女にくいかかった火祀くんに、彼女は少し顔をうつむかせた。
「私の事は遊びだったんですね……お泊まりまでしたのに……」
「お泊まり? ちょっとそれどういうこと!? 気になるわ! 純!」
「おいコラテメェ、殴るぞ」
そう言いながらも先に殴りかかっている火祀くんに、彼女は「嘘ですよ」とヒラリとかわした。遊ばれている、とぼやいた長谷に同意をする。火祀くんが遊ばれている。
「先輩とはそんな仲じゃないです。腐れ縁ですが。お泊まりだって誰かに断られたから私が代わりに里帰りに同行して事件に巻き込まれただけですし、恐らくはそのお礼ですよ」
「事件に?」
「コイツ出かけた先々で事件が起こるからな」
「え?」
「やめてください、縁起でもない。偶々ですよ」
「偶々っていう度合いじゃないだろ」
「まだ今年で数回ですよ」
「もう今年で数回だろ」
「被疑者、容疑者、被疑者家族、容疑者家族をそれぞれ一巡したのでもうお腹いっぱいです」
「今日も巻き込まれたんだろ」
「巻き込まれる前に兄によりリリースされました」
ポンポンと交わされる会話に、俺たちが唖然とする。冗談なのか、本当なのか彼女の表情からはわからない。骨董屋が笑い声をあげた。
「はは、なら折角だ。君にも考えてもらおう」
そう言って取り出したのは何か古い地図と本、そして人形だ。なんだなんだと周りがそれを覗き込む。
「今から話すのは事実と言われている話だ。100年の話である。少し、曰く付きのね。話としては『そして誰もいなくなった』が正しい」
骨董屋はそう告げて、二人を見る。
「この謎を解き明かして欲しいのだよ、名探偵」
ニコリ、と笑った骨董屋に、二人は顔を見合わせた。
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