奇術師愛好会殺人事件09
「貴女のブーツの中に……矢の後端にヒモの輪がついたもう一本の矢がね!」
その言葉に言い逃れができなくなったのか、それとも諦めたのか、田中さんはついに自供をはじめる。どうやら、田中さんは春井風伝の孫娘だったらしかった。春井風伝が事故死した後、チャットの一文が許せなかった為に起こった殺人事件らしかった。俺としては、尊敬できる春井さんの孫娘がこんな犯罪を犯して欲しくなかった。
「でも、あの二人もイカサマ童子が春井さんだと知ってたらあんなこと……」
「そうね……でも、土井塔くんと飯塚さんは気づいていたみたいよ」
「え?」
「あのショーの前日に二人から励ましのメールやメッセージが届いてたから……」
なんだそれ、初耳だ、と思いながらアキのいる方を見る。アキはベランダにもたれて部屋の中を見ていた。
「しかし、なんで彼らが?」
「アキちゃんはともかく、おそらく、彼も奇術の使い手だから、かな?」
「え?彼が?」
「あら、まだ気づいてないの?土井塔克樹のアナグラム……文字を並び替えると……」
不意に現れた白に、アキは面白そうに笑っている。アキが黒い服をきているが為に、白と黒のコントラストだ。
「怪盗キッド!」
ああ、くそ、俺も近くでみたかったな、だなんて。まぁ、機会はまたあるかと息を吐く。何はともあれ、事件は解決である。キッドはいつかまた対面できるだろう。きっと。