奇術師愛好会殺人事件10
「これはこれは、奇術師のお嬢さん」
目の前に現れた白い存在にクスリと笑う。土井塔克樹、不思議な名前だとは思っていたが、どうやら世間を騒がす「怪盗キッド」のアナグラムだったらしい。
「貴方も気づいていたんですね、春井風伝さんのこと」
「ええ、イカサマ童子はデビュー当時のステージネームですから。それにしても、貴女のマジックの腕は素晴らしかった」
「お世辞を言っても何も出ませんよ」
「いえ、お世辞ではないですよ。貴女のマジックの腕は素晴らしい。だから、貴女はこの殺人のトリックを誰よりも早く見抜いていた」
「それは、どうでしょうか?」
ふふ、と笑みを浮かべる。ただ、それは事実だ。でも、私は探偵ではない。
「女は秘密を着飾るもの、ですので」
「貴女がそんなにも美しいのはそれが原因ですね? あぁ、あと、一つ」
ポン、と目の前に出されたバラは白い。
「貴女は純白の薔薇の方がお似合いですよ」
「いえ、白いバラが似合うのは貴女でしょう。私と貴女は正反対のようですから」
バラを赤く染め、匂いを嗅ぐ。睡眠剤が入っていたらしい。襲ってきた眠気に倒れこめば、怪盗キッドが抱きとめてくれた。私の意識が落ちるのと、コナン君が入ってくるのは同時だったようだ。意識が、眠りに、落ちていく。