大海の奇跡06
「ねぇ、遠山さん。どうして空からキッドが来るってわかったの?」
蘭さんたちと合流後、コナンが高遠に問いかけた。そのため、中森警部を始め、大人の視線が高遠に向く。わざと、ではないんだろう。このコナンの表情は、純粋に不思議に思ったという感じだ。高遠はコナンを見て、口を開く。
「彼の予告状の文面をアキから見せてもらいましたが――地面を歩く、とは書いていなかったでしょう?」
「でも、普通は地面を歩くと考えちゃうよね?」
「どうして、あの怪盗キッド相手に『普通』を当てはめるのですか?」
「――どういうことだ?」
高遠の言葉に、中森警部が高遠を見て尋ねる。高遠は中森警部を一度見、自然に中森警部から視線を外した。
「そのままの意味です。私は『怪盗』と『泥棒』の違いはよくわかりませんが――それらの前に彼は一人の『奇術師』であることを貴方達は頭に入れておくべきです」
「なんだとぉ!」
「奇術師は――人を欺いてこそ『奇術師』なのですよ。そこには『常識』は存在しないと言っていい。吐いた言葉は嘘か真かもわからない。観客を全て『欺く』のが奇術師の本分ですから」
高遠はアキの手を取ると、コナンと俺に視線を落とした。
「――ヘリには気をつけたほうがいい」
「ヘリ?遠山さんはトリックがわかったの?」
「あれは、彼のアシスタントが優秀だからこそ成し得たマジックですから。後、マジシャンが同じ舞台で、同じ観客を前に、同じマジックをする可能性は低いですからお気をつけて」
にっこりと高遠が笑う。中森警部は一瞬の間を置いて、高遠の頬をおもいっきり引っ張った。さすがに予想していなかったらしい高遠は目を大きく見開いて、そして、あのマネージャーの際のようにナヨナヨした雰囲気で中森警部を見た。
「なにするんですか、警部さん」
「お前がキッドかと疑っただけだ」
「私は違いますよ。ずっとアキとヤマトくんのそばにいたんですから……いたたた」
「大丈夫ですか、遠山さん。赤くなってます」
「あの警部さん、酷いですよ、アキ。横暴だ」
そう言って少しアキの後ろから恨めしげに見る高遠に、毛利探偵が「こんなのでよくボディーガードしてるな」というのが聞こえた。騙されてる。騙されてるよ、毛利探偵。