大海の奇跡08



「……ルパンが寝てる」

 次郎吉さんのサイドカーに忍び込もうとした時である。おれはソレを見つけて身震いした。ぐっすり眠っているルパンはかなり可愛らしい。やばい。

「コナン、お前がキッド追い詰めろよ」
「いいのか?お前、さんざんキッドとあってみたいって」
「お前と会う限りどっかでまた会うだろ。多分。中森警部への連絡はまかせろ!」
「……そういって、ルパンの看病がしたいだけだろ」
「ああ」

 そういえば、呆れた笑いが飛んできた。悪かったな。犬優先で。とりあえず乗り込んだコナンを見送り、乗り込みにやって来た次郎吉さんをルパンと隠れて見逃す。あとは、携帯電話でアキを呼んで、中森警部を連れてきてもらうだけだ。

「――おや、ヤマトくん」
「な、た、たか……遠山さん!?」
「キッドを追いかけてきたのですが、一足遅かったようですね」

 そう言って肩を潜めた高遠。アキは、と尋ねれば中森警部に事の顛末を話していますよ、と返事が来た。なるほど、俺が連絡をいれる程でもないらしい。

「お前でも、キッドに興味があるんだな」
「ええ、彼は私が幼い頃からいた怪盗ですからね。七年前に一度姿を消しましたが――」
「なんで興味があるんだ?おなじ奇術師だからか?」
「彼は死んだはずだからですよ」
「は?」

 高遠は近くの壁に持たれると、俺をちらりと見た。

「これは、私が調べたものなので断定はできませんが。彼はとあるマジシャンが行った先に、現れていたんです。そのマジシャンは日本人、尚且つ、私の母である近宮玲子と並ぶマジシャンでした。その彼が『リハーサルの事故』で亡くなったのが『七年前』。キッドが活動をやめた時期とかぶるでしょう?」
「……ああ、たしかにな」
「それに、アキが面白い情報をくれましてね。そのマジシャンの息子と知り合ったというではないですか。そして、彼女も同じような推論を立てているでしょう?」

 ――怪盗キッドは二代目さんのようですね。
 頭のなかでアキがそう告げた。

「今の、怪盗キッドは二代目、」
「ええ、恐らくは息子が跡を継いでいる。遠目から見ても、彼は私と同じか――いえ、年下のように見えました。そして、二代目は一定の期間を過ぎるとビッグジュエルばかり狙っているとききました。父親の死に関係しているのでしょうね」

 高遠が雄弁に語る。俺は眉を潜めた。

「なにが、いいたいんだ?」
「いえ?彼なら、優秀なマリオネットになってくれそうだと踏んだだけですが?」
「……テメェ!」

 ぐっと手に力を入れて、高遠を睨む。高遠は余裕そうに、愉快そうにこちらを見て嗤う。コイツ、キッドを人形にする気だったらしい。

「キッドはお前のマリオネットにならねーよ」
「……さぁ、どうでしょう。人の憎悪は時に増幅するものですから」
「いいや、ぜってーならないね。それに、お前と違って捕まらねーし、お前が接触できねーよ。優秀な助手がいるからな」
「おや、私に何時、助手がいないと?」

 高遠は首を傾げた。

「私には助手がいますよ。誰よりもわたしを理解する、とびっきり優秀な弟子がね」
「――っそれ!」
「ヤマト?遠山さん?」
「ここにいますよ、アキ」

 不意に聞こえたアキの声に、高遠が手を振る。やってきたアキは蘭さん達を連れていた。どうやら今からパトカーでキッドを追いかけるらしい。行きますか?と訪ねたアキに、高遠は笑顔で「行きましょう」という。
 アキは、違うよな。だって、アキは、人を救う職になりたいっていってたし。でも、なんだ、この、嫌な予感は。不安を紛らわすように抱えていたルパンをギュッと抱きしめる。

「アキ、」
「どうしたの?ヤマト」

 そういってゆるやかに微笑んだアキは、俺の手をとって歩き出した。
 コナンがキッドからお宝を奪取していた、のは、言うまでもない話である。