蝋人形城殺人事件06


「跳ね橋があげられるって、完璧クローズド・サークルじゃん。携帯も圏外だし」
「事件の予感が色濃くなりましたか?」
「金田一いる時点で濃いって」

 そういって、アキを見上げる。ドレスのような服を着たアキは、できましたよ、と俺に帽子を渡した。

 あの後――レッドラムの宣言の後、跳ね橋があげられた。何でも四日間外部との接触を絶つのだとか。そして、その後自分たちの部屋に案内される。俺は子供の特権でアキの部屋と同じ部屋である。周りと比べて少し広いそこはまぁまぁ過ごしやすそうだ。なんでかは知らないが、レッドラムは俺達に中世ヨーロッパの服を着るように指示を出した。ので、アキはドレスのような衣装、俺は騎士のような服をしているわけだ。おい、誰だ、俺を見て長靴をはいた猫みたいだといった奴は。俺も自覚してるっての。
 俺が着替えるのに手間取ったからか、アキと部屋を出て集合場所へ行くが、もう中にはいっているようである。後ろから聞こえてきた足音に、アキが振り向いたので俺も振り向く。そこにいたのはフリードリヒさんだ。真っ白なドレスを着た彼女は、まるで本当のお姫様みたいである。アキが黒系のドレスであるのに対し、フリードリヒさんの白色は正反対にも見える。

「フリードリヒさんも今から中に入んの?」
「えエ」

 そう言って微笑んだフリードリヒさんに、アキは俺に「ほら、エスコートすべきですよ」と告げる。俺が変な顔をしたのにもかかわらず、アキはニコリと笑って扉を開けた。俺がため息を付いて、フリードリヒさんに手を出せば、フリードリヒさんはきょとんとした後に手を重ねてくれたのでそのままエスコートする。

「遅れて申し訳ありません。着替えるのに手間取ってしまって」
「わぁ、アキちゃんのドレス、素敵!」
「ありがとう。美雪ちゃんのも素敵だよ。フリードリヒさんも素敵だったけどね」

 アキの言葉をよそに、フリードリヒさんの手を引いて部屋に入る。部屋の中はきらびやかで、まさしくお城の部屋という感じだ。俺達の質素な部屋とは正反対である。そのままエスコートすればいいのか迷っていれば、真木目さんが俺を押しのけてフリードリヒさんをエスコートしていった。そのさい、フリードリヒさんと目があったので苦笑いしておく。
 うん、フリードリヒさんは目の保養だ。隣が明智警視とかならもっと保養になるのに。

「なんで、俺がこんな服なのに、ヤマトは優遇されてるんだよ!」
「なんだ、変な服がひとりいると思ったら、お前だったのか金田一」
「うっせーよ!」
「道化師の服だね。まるでトランプのジョーカーみたい」
「ええ、まさしく道化師の服でしょう。金田一くんにはお似合いです。ヤマト君の服は、騎士の服ですね。三銃士のダルタニャンを思い出しますよ」
「ダルタニャン? ダルタニアンじゃないの?」

 明智警視の言葉に、美雪さんが首を傾げる。

「フランス語や英語ではではダルタニャンの発音になります」
「う〜ん、ヤマトはダルタニャンではなくて、長靴をはいた猫みたいですよ」

 アキの言葉に、俺はガックシと肩を落とす。明智警視のダルタニャンで持ち上げられて、アキの長靴をはいた猫で落とされた感じがする。アキの発言に、明智警視と美雪さんはクスっと笑い、金田一は馬鹿にしたように笑ってきた。周りもアキの発言にクスリと笑ったようだ。まあ、微笑ましいなぐらいの笑い方はこの際許そう。だがしかし。

「猫だってよ」
「道化師よりはマシだと思うし、プス舐めんなよ!」

 腰に刺さっている偽物の短剣で金田一を追い回したのは悪くない。俺にとって長靴をはいた猫=シュレックに出てくるプスである。あいつはいいキャラしてるし、結構好きだ。
 ひとしきり金田一を追いかけて、シャンシャンうるせぇよ、と言い放ち夕餉にありつく。道化師よりはマシである。道化師よりは。


 夕飯の後、レッドラムの指示通り、ビリヤードをすることになった。といっても、俺はアキと一緒にやってるのだが。うーん、ビリヤードといえば、某怪盗を思い出すなぁ、なんとなく。 アキに教えてもらったようにプレイするが、なかなか難しい。俺がミスをしてアキがフォローに回ることが多い。

「アキちゃんって上手ね。やったことあったの?」
「イギリスに行った時にね。あと、昔教えてもらったことがあるし。でも、こういうゲームじゃなくて、アーティスティック・ビリヤードの方だったから」
「おオ! お嬢サンはトリックショットができるのかネ!」
「少しだけですよ」

 アキとアンダーソンさんがそんな会話をしていれば、プレイしていた真木目さんがミスをした。俺達の番である。次はアキからだ。変な位置にボールあんな、と思っていれば、アキはテーブルに座り、なんか独特のフォームを取る。コンっという音とともににジャンプしたボールは、目的の番号にあたり、それはポケットへと落ちていく。

「鮮やかなジャンプショットですね」
「反則じゃないみたいで安心しました」
「14-1ならともかく、ナインボールですから大丈夫ですよ」

 丁度白球は俺の打ちやすいところに転がってくる。俺もアキに教えてもらったように構えるが――カツン、という音がなって、変な方向に転がっていった。解せん。そして、俺がミスするたびにニヤニヤ笑う真木目さんがウザい。ムッと真木目さんを見ていると、アキが時計を確認する。

「ヤマト、そろそろ寝る時間ですし、お暇しましょうか」

 そう首を傾げたアキに、「そうですね、ヤマトくんは寝た方がいい時間ですと」明智警視がいう。くっそ、もうちょっと上達したかった。今度ルールわかりそうな灰原誘ってやろ。ぜったいコナンは誘わないからな。アイツぜってーできるし、ドヤ顔する。