蝋人形城殺人事件08



 騒ぐ周りから抜け出し、こっそりと死体に近づく。背中からの出血がすごい。失血死だろうか。明らかに殺人である。死後は――。

「みなさん、これは殺人です! 死因は心臓からの出血による失血性ショック死……当麻さんの場合、死後硬直が下顎にまで出ているようですから――死後二時間は立っているでしょう」

 いつの間にか後ろにいたフリードリヒさんは、見ただけでそう判断したらしい。すげぇ。明智警視に俺は回収されたが、尊敬の眼差しでフリードリヒさんを見てしまったのはしかたがないだろう。

「金田一くん、君が当麻産の人形を遊戯室に運んだ時間は?」
「12時半だよ! Mr.レッドラムにそう指示されてたんだ」
「――と、いうことは、蝋人形が殺される前には当麻さんは亡くなっていたようですね」
「ええ、そうなります」

 アキの言葉に、明智警視が頷く。そんな様子を見て、真木目さんが「連絡しなくてもいいのか!」と騒ぎ出した。

「連絡するっていっても、携帯は圏外だぜ?」
「なら、固定電話とかがあるだろ!」
「そ、それが! この城には電話や通信機などは一切置いてないのです……」
「それじゃ、そうやって外と連絡を取るんだよ!」
「兎に角、Mr.レッドラムを呼んで頂戴!」
「レッドラム様はこの城にはおられません……」
「なんだって!?」
「落ち着いてください! 中庭には私の車がある! 麓の村まで行けばなんとか連絡がつくでしょう!」

 そう告げた明智警視が走りだすのを見て、俺達も慌てて後を追う。いきついた先、跳ね橋を上げる機械がある小屋にたどりつくが、機械が壊されている。コレは、完璧なクローズド・サークルの出来上がりだ。

「ヤマトの予感があたってしまいましたね」

 そう言ったアキに、俺はため息を付いた。